『House of Ashes(ハウスオブアッシュ)』はSupermassive Gamesが開発するシリーズ「The Dark Pictures Anthology(ザ ダークピクチャーズアンソロジー)」の第3弾としてリリースされたアドベンチャーゲームだ。
『ハウスオブアッシュ』のテーマは紀元前から続く怪物との戦い、敵味方を超えた共闘。
メソポタミアに誕生したアッカド帝国とグティ人、イラク戦争下でのアメリカ軍とイラク軍、敵同士が1つの目標のために協力する。遥かな過去をなぞるようなストーリー構造だ。
この記事では4つのポイントを上げながら、『ハウスオブアッシュ』をレビューする。
ジャンル | ホラーアドベンチャー |
発売元 | BANDAI NAMCO Entertainment (公式サイト) |
開発元 | Supermassive Games |
プラットフォーム (ストアリンク) | PlayStation 4&5 Xbox One&SeriesX/S PC(Steam) |
発売日 | PS:2021年10月22日 Xbox:2021年10月22日 Steam:2021年10月22日 |
プレイ時間 | 6.5時間(クリアまで) 16時間(総プレイ時間) |
- アクション映画が好きな人
- パニックホラーが好きな人
あらすじ
2003年、イラク。
エリックは自身が開発したシステムによって戦闘地域に武器庫らしき施設を発見した。
化学兵器の可能性があるとして、現地にキャンプを張っていた海兵隊部隊を率いて制圧に向かう。
部隊は現地に到着後、建物を制圧。探索を行っている最中にイラク軍から銃撃を受ける。
激しい銃撃戦を繰り広げる中、突然の地割れで両軍とも地中に落下してしまう。
散り散りになった隊員たちが地下を彷徨っていると視界の先に謎の怪物が現れるのだった。
基本システム
『ハウスオブアッシュ』は2つのパートに分かれる。
- 探索パート
- ムービーパート
探索パートではキャラクターを操作して周辺を探索。ストーリーを補完説明する収集物や今後の運命を示唆する石板を回収する。
ムービーパートでは会話中の問いかけに対し返答や進行方向を選んだり、急にボタンを押さなければいけないQTE(クイックタイムイベント)が発生する。
探索とムービーを繰り返し、選択肢によってストーリーが分岐していくシステムだ。操作可能なキャラクターは5名で、シーンにあわせて自動で変わっていく。
ゲームモードは一人プレイと複数人でプレイによって分けられ、複数人の場合は、
- ムービーナイト
- シェアストーリー
の2つが用意されている。
ムービーナイトは各々の操作キャラクターを決めて、担当のキャラクターを操作するタイミングがきたら該当のプレイヤーが操作する。
わざわざ分けずともコントローラーを渡せばよいだけで、必要性が分からないモードだ。
シェアストーリーはオンラインでフレンドとプレイできる。
シリーズ恒例のDLC「キュレーターズカット」も健在で、同じストーリーを別のキャラクター視点で楽しめる。
ストーリー:プレイヤーは長尺のアクション映画を見せられているのか?
『ハウスオブアッシュ』には3つの時間軸がある。
- アッカド帝国(ナラム・シン統治下):紀元前2231年
- ランドルフ・ホジソン探検隊:1945年~1947年
- イラク戦争下:2003年
最初のチャプターで①アッカド期が終わると、以降は③イラク戦争下でプレイする。探索中に②ホジソンの記録を見つけ、徐々に②の実態が明らかにされていく。
出番は少ないのに強烈な印象。映画『300(スリーハンドレッド)』のクセルクセス王を意識してるわね。
メインとなるイラク戦争下のストーリーはホラーというジャンルを一時忘れさせる。
アメリカ軍とイラク軍の銃撃戦を見せられたときには戦争映画でも見せられているのか思った。
本作ではとにかく銃がよく使われる。地下に落ちてからも銃撃だらけで、恐怖を吹き飛ばしてしまう。
敵対する者同士が共通の敵を倒すために力を合わせる熱い友情モノのアクションだとすれば、悪くない。
ジェイソンが敵兵に対し、心の内をさらけ出すシーンでは彼の人となりが理解でき、終盤のシーンでは手に汗握って応援したくなる。
ジェイソンが身につけている「ある持ち物」について真実を語るシーン。スーパーマンや超人的ヒーローではなく、普通の人っぽくて共感できる。
怪物に怯え、戦うパニックアクションだと思ってプレイするなら楽しめるかもしれない。
ホラーとしてはいまいちだ。終盤に判明する怪物の正体や由来を知らされてからは白けてしまい、恐怖を大きく減じてしまった。
『クワイエット・プレイス』みたいなやつ、みんな好きよね。怪物の正体は不明の方が怖いんだけど……。
アッカドと現在(イラク戦争中/2003年)の間にあるランドルフ・ホジソンのストーリー(1945年~)のほうが謎に満ちており、おもしろそうだった。
ホジソン探検隊の話をもっと知りたかった。
演出:敵の正体が分かれば恐怖へのこだわりも意味をなさない
『ハウスオブアッシュ』では序盤から怪物の存在をちらつかせる。
過去のシリーズと違って正体不明の怪異ではなく、姿形が比較的はっきりと見える上にキャラクターが反撃することも可能だ。
プレイアブルキャラクターはみな軍人で、闘争心が強い。
見た目は気持ちが悪いし、圧倒的に強いとはいえ、人間側も対抗手段を持つため恐怖に怯える場面は少ない。
怪物が主人公たちを影から狙っているようなカットも、怖さよりいつQTEがくるのか身構える時間のように感じた。
キャラクターが画面の多くを占め、視界が悪くなる探索パートはただ見にくく、歩きにくいだけだ。
前方を見えにくくすることで、いつ怪物が現れるかという恐怖を意図的に作り出そうとしているが、ストレスしか感じない。
ホラーよりもパニックが重要視された作りで、プレイヤーをびっくりさせる演出(ジャンプスケア)に頼りすぎている。
シリーズの前作までに感じていた得体のしれない恐怖は味わえない。
毎回ピックアップされる人気の役者枠、今回はレイチェル役のアシュリー・ティスデールだった。
アシュリー・ティスデールはディズニー・チャンネルの『スイート・ライフ』『ハイスクール・ミュージカル』などに出演している。
レイチェルというキャラクターの性質上、なんとなく険のある演技で印象も悪く、影は薄かった。むしろ、終盤ではジェイソンが主役のような立ち位置で活躍し、強い印象を残した。
驚いたのは、あるルートで明かされたレイチェル・エリック夫妻の間に亀裂が入るきっかけとなった出来事。
舞台となったのは、前作『リトル・ホープ』に登場したダイナーだ。
ファンにはうれしいサービス。思わず『リトルホープ』をプレイし直しちゃった!
『リトル・ホープ』冒頭の事故と関係しているのかと思いきや……そこは関係なかったわね。
操作性:プレイヤーへの配慮あふれるオプション設定はグッド
『ハウスオブアッシュ』では危険が迫ったときなどに現れるQTE(クイックタイムイベント)には豊富なオプションがあり
- シングル・アクションボタン……QTEで押すボタンを1つに集約する。
- 長押しでボタン連打クリア……連打不要、ボタン長押しでクリア可。
- QTEのタイムアウトを無効にする……QTEの時間制限がなくなる。
- QTEのコンバットタイマーを無効にする……QTE(戦闘)の時間制限がなくなる。
これらをすべてONにすることでQTEが苦手なプレイヤーでもミスなくクリアできる。
初回は全てOFF、2周目以降はONでプレイした。QTEでイライラしなくていいのがありがたい……!
QTE以外でおすすめの設定は字幕関連のものだ。
本作は字幕が上下の黒枠ではなく、下の黒枠の少し上に表示されるため、初期設定はかなり読みにくい。
オプションの「字幕背景」を濃くすると字幕がかなり読みやすくなるため、プレイ前に設定することをおすすめする。
字幕関連ではテキストの大きさやキャラクターによっての色分けも可能。必要にあわせてカスタマイズできる。
リプレイ性:1周のプレイ時間は6時間半、周回プレイがツラい
『ハウスオブアッシュ』のリプレイ性は最悪だ。
筆者のプレイ時間は初回1周6時間半で2名しか生存できなかったため、全員生存ルートを目指し、何度か戻りながらリプレイし、合計で16時間かかった。
ムービー中に選択肢が出るためスキップできないのは仕方ないが、チャプターによっては1時間近く戻されることもあった。もう少し細かくチャプター分けされていれば、周回プレイが快適になっただろう。
地下に落ちた直後のチャプターが長すぎ!
総合評価
総評:まずまず
2.5/5
『ハウスオブアッシュ』はありがちなパニックアクションだ。
ホラーよりもアクションの要素が強く、やたらと銃撃戦が目立った。敵同士が1つの目的に向けて助け合う友情ストーリーは悪くなく、アクションモノと捉えればおもしろくもあった。
怪物の実態が明らかになり、何度も撃退するうちに恐怖は薄れる。ジャンプスケアを多用した演出は瞬間的な驚きを生むだけで、恐怖とは異なる。
QTEや字幕のオプションは豊富でプレイヤーへの配慮はあったが、長いチャプターのおかげでリプレイするたびにストレスを感じた。
ホラーではなく、アクションを期待するプレイヤーなら楽しめるタイトルだ。
- 友情アクションものとしてはおもしろい
- プレイヤーへの配慮を感じるオプション設定
- ヒロインのレイチェルに共感できない
- 恐怖がない
- 時間のかかる周回プレイ
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