『Little Hope(リトルホープ)』はSupermassive Gamesが開発するシリーズ「The Dark Pictures Anthology(ザ ダークピクチャーズアンソロジー)」の第二弾としてリリースされたホラーアドベンチャーゲームだ。
『リトルホープ』のテーマは「魔女狩り」
魔女狩りとは15~18世紀にヨーロッパで広まった集団パニック現象だ。
悪魔と契約して魔術を使ったと疑われた者を法廷で裁き、あるいは私刑にかけて虐殺した。アメリカでは1692年に始まったセイラムの魔女裁判が悪名高い。
過去の「魔女狩り」の記憶が現在に絡み、2重、3重のストーリー構造をなしている。
この記事ではPS4版『リトルホープ』のレビューをお届けする。
ジャンル | ホラーアドベンチャー |
発売元 | BANDAI NAMCO Entertainment |
開発元 | Supermassive Games |
プラットフォーム (ストアリンク) | PlayStation 4 Xbox One PC(Steam) |
発売日 | PS4:2020年12月3日 Xbox:2020年10月30日 Steam:2020年10月30日 |
プレイ時間 | 5時間 (クリアまで) |
- サイコスリラーが好きな人
- 良質なホラーゲームをプレイしたい人
あらすじ
通行止めのため、道を迂回したバスがリトルホープで横転事故を起こす。
大学教授と学生たちは無事だったが、バスの運転手が見当たらない。
5人は助けを求めて、深い霧が立ち込める中、荒廃した街・リトルホープを目指して歩きはじめた。
ストーリー:3層構造が巧みで面白い
物語中には、3つの時間軸が存在している。
- 17世紀……魔女狩りの時代
- 20世紀……繊維工場の閉鎖に伴い、町が廃れた
- 現在(メイン)……バス事故
プレイヤーがリトルホープの町をさまよううち、17世紀に起こった魔女狩りの場面が何度も再現される。
それらはあくまでも過去の出来事であり、プレイヤーには関係ないはずだったのに、いつの間にか巻き込まれ、現在に侵食していく。
過去の人物や出来事が現在にリンクしているのが面白く、あの出来事がこの出来事に繋がっているのか!とワクワクした。
ゲームモード:一人プレイモードだけで充分
『リトルホープ』は通常の一人プレイモードの他に複数人プレイモードがある。
- ムービーナイト
- シェアストーリー
ムービーナイトは誰がどのキャラクターを操作するか決めて、そのキャラクターを操作するタイミングになったら、最初に設定したプレイヤー名が表示される。
同時に複数人でプレイする場面はなく、交代で一人ずつ操作することになるため、一人でプレイするのと大きな差はない。
これであれば一人プレイだけで充分だった。
シェアストーリーではオンラインでフレンドとプレイすることができる。
操作性:QTEをオプションの工夫で乗り切れ
『リトルホープ』のゲームシステムはキャラクターを操作して進みながらアイテムを集めたり、要所で表示される会話の選択肢を選ぶというもの。アドベンチャー定番のシステムだ。
工夫が見られたのは、時折現れるQTE(クイックタイムイベント)だ。
急なボタン入力を要求されるQTEを嫌うプレイヤーは多いと思う。私もその一人だ。
しかし『リトルホープ』では、QTEの直前になると、予告のマークが表示される。ムービーに見入っていたとしても、マークが出た段階で心の準備ができ、失敗が少ない。
さらにオプション設定も充実している。
- シングル・アクション・プロンプト(一つのボタンのみ)……複数のボタン操作が嫌な人は、一つのボタンに集約することができる。
- ボタン長押しで、ボタン連打クリア……連打が面倒な人向き。
- QTEのタイムアウトを無効にする……時間制限がなくなることで、焦ってボタンを押し間違えることはなくなり、ストレスから解放される。
もちろん従来どおりのスリリングなプレイも可能だ。
海外ゲームにありがちな字幕が小さい問題にも、解決策が用意されていた。
オプション設定で字幕のテキストサイズ変更やキャラクターごとの色分けを行うことで、快適にプレイできる。
演出:恐怖を増幅させる仕込みが抜群
『リトルホープ』は現実の役者の演技をモーションキャプチャーしており、人物の動きがリアルだ。
主役のウィル・ポールター(アンドリュー役)は『デトロイト』『ミッドサマー』など数多くの映画に出演する役者で、演技も上手い。
映画『デトロイト』では憎たらしい警官だったけど、今度はいいやつ!
サウンドも絶妙だ。森の中や建物内では環境音がメイン。だからこそ効果音が目立つ。
暗闇の室内、静寂で物が落ちる音がどれだけ怖いことか。
突然音が鳴るといえどチープなジャンプスケア(突然驚かす演出)ではなく、必要なタイミングで必要な音を使ってプレイヤーの恐怖を煽っている。
私はゲーム冒頭のシーンから心がつかまれた。(Twitterでもシェアした)
湯加減を確認するアンの後ろに突然現れるメーガン。
そのタイミングで映画『サイコ』のメインテーマを思わせるようなキィッーーーーーーー!!と入る効果音。
このサウンドはかなり怖い。それだけなく、なにか品を感じるような音選びも好みだ。
クリーチャーの見せ方も上手い。
ボーナスコンテンツでも製作者が語っているが、得体のしれないものから追われるのは誰でもこわい。それでもすべてが見えてしまうと怖さが減ってしまう。
そこで『リトルホープ』ではストーリー中盤までクリーチャーの全容が明かされない。
もちろん存在はしているけれど、部分部分小出しにすることで、全身は一体どんな姿なんだろうとプレイヤーは妄想を掻き立てられる。
人間は理解できない物が怖いという心理を巧みに使った演出だ。
リプレイ:時間のかかる周回プレイはマイナス
リトルホープのプレイ時間はスムーズに進めれば5~6時間だ。
アイテムの探索に時間がかかれば、その分伸びていく。
選択によってストーリーが変わるため、周回プレイは必須だ。
ここでの欠点がムービー、エンドロールがスキップできないこと。
途中に選択肢があり、すべて飛ばすことが難しいのも分かるが、あまりにも時間がかかりすぎる。
ストーリーの大筋ではそこまで大きく変わらないため、周回プレイ後の徒労感は否めない。
DLC「キュレーターズカット」
『リトルホープ』の早期購入特典DLC「キュレーターズカット」もプレイした。
キュレーターズカットはシアターモード(通常ルート)では明かされなかったルートがプレイできる。
たとえば、
- シアターモード:アンドリュー・ジョン・テイラー組
- キュレーターズカット:ダニエル・アンジェラ組
というように変わる。
学生グループは序盤で分かれて別の道を進むため、一方をプレイする間、もう一方の状況はわからない。その間にどういうやり取りがあったのか、きちんと描かれているのが面白い。
さらにシアターモードでは分からなかった17世紀の様子(タバサ、デイヴィッドの結末)が明かされ、本編を補完する内容になっている。
とはいえ、ストーリーの大筋は変わらないため、5人が合流して全員で行動している間は変化に乏しい。
総合評価
総評:非常に良い
4.5/5
『リトルホープ』は良質なサイコスリラーアドベンチャーだ。
3つの時代が交錯するシナリオはゲームを進めるにつれて点を結び、プレイヤーを一気に引き込む魅力を備えている。
演出では役者の演技、静寂を生かしたサウンド、あえてすべてを見せないカメラワークが恐怖をかき立て、ゲームの完成度を高めた。
周回プレイへの配慮には少し不満が残るが、キュレーターズカットではさりげなくヒントを与え、プレイヤーを飽きさせないように工夫がされている。
良いポイントが多いタイトルで、ホラー好きにはぜひおすすめしたいゲームだ。
- 3つの時代が交差する優れたストーリー
- 恐怖を増幅させる見事な演出
- 工夫された操作性
- 周回プレイにはツラいムービースキップなし
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このページで使用している『The Dark Pictures Anthology: Little Hope』のゲームキャプチャ画像はSUPERMASSIVE GAMES / バンダイナムコエンターテインメントの著作物です。転載、配布等は禁止いたします。