『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』はファミコンディスクシステムで発売されたミステリーアドベンチャーシリーズの第2弾だ。
前作「消えた後継者」の前日譚にあたり、主人公とあゆみが出会うきっかけとなった事件が描かれる。
ホラーというより、物悲しいストーリーだ。
この記事では、6つのポイントを上げながら、Nintendo Switch版『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』をレビューしていく。
ジャンル | 推理アドベンチャー |
発売元 | 任天堂 |
開発元 | MAGES. |
プラットフォーム | Nintendo Switch |
発売日 | 2021年5月14日 |
プレイ時間 | 5時間 |
- 分かりやすいミステリーが好きな人
ストーリー(あらすじ)
主人公は空木探偵事務所で働きはじめて数ヶ月の少年探偵。
丑美津高校の生徒・小島洋子の殺人事件を捜査することになった。
情報収集をはじめると、洋子の死には「うしろの少女」と名のつく学校の怪談が関わっていることに気づく。
主要キャラクター紹介
主人公
行くあてがなく夜道を彷徨っていたところを空木探偵に拾われる。
現在は空木の助手として現場に同行する駆け出しの少年探偵。
橘 あゆみ
丑美津高校1年生。
殺された洋子とは2人でサークル・探偵クラブを結成した友達であった。
友人の無念を晴らすため、捜査の手助けをしたいと志願する。
空木俊介
警察からも一目置かれる探偵。
主人公を暖かく見守り、成長を促す。時にはヒントもくれる頼れる存在だ。
ホラー要素はマイルド
「うしろの少女」とは校内で誰かに呼ばれた気がして振り返ると、血染めの少女がなにか言いたげに立っているという、ありがちな学校の怪談だ。
ホラー要素を押し出してくるからにはかなりの恐怖展開があるのだろうと思っていたが、ホラー慣れした筆者にはあまり怖くなかった。
ホラーを期待すると肩透かしを食らう。
物悲しいシナリオこそが魅力のはずが……
「うしろに立つ少女」の魅力はクリア後に物悲しさが残るシナリオだ。
誰かが別の誰かを思っての行動が連続する悲劇を生み出していく。
彼、彼女らの行動を解明する段階では、それが何を意味するのか分からないが、事件の全容がつかめるとボタンの掛け違いが明らかになる。
事件解決後、主人公の口から語られるエピローグは余計だった。
ある人物の行動を説明するものだったが、そうした情報は作中にさりげなく情報を埋め込んでほしかった。
わざわざゲームの中からストーリーを《説明》されると興ざめするよ……。
そうは言っても、いまどきマンガも映画も全ての行動を言葉やセリフで明確に説明されないと理解できない人ばっかりだから。プレイヤーの読み解き能力に全面的に頼る作りのものは、今どきの若者にはウケないのよね。
グラフィックはマッチしている
前作「消えた後継者」のグラフィックは人間の醜さやおどろおどろしさが表現されていなかったところが不満だった。
「うしろに立つ少女」は学校が舞台であり、主な登場人物も若い年齢に偏っているためそこまでの違和感はなかった。
むしろ感情が描かれていると犯人の目星がついちゃう
ところどころに出てくる女性キャラクターはかわいらしく、癒やしでもあった。
あゆみちゃん一強時代崩れる!
エンディング後のおまけを楽しむ
クリア後にはプレイ内容に応じて、性格判断が行われる。
次にあゆみとの相性チェック。
筆者はあゆみちゃんと相思相愛だと思っていたのに違ったようだ……。
学校で聞き込みした子じゃないか!はい!付き合います!
ちょっとしたサービス要素だが、クリア後の切ない気持ちを和らげてくれる。
雰囲気を作り出すBGMと声優の演技
ファミコン探偵倶楽部シリーズには名曲の宝庫だ。
雰囲気作り出すサウンド
過去作の雰囲気を感じさせるBGMはどれも素晴らしい。
「うしろに立つ少女タイトル」は勇ましさの中にも切ないピアノが響く名曲。「思い出」のノスタルジックで物悲しい雰囲気は本作にピタリとハマっている。
作中で訪れる「ショットバーサンボラ」のBGMもジャジーでまたかっこいい。
皆口ボイスの破壊力がすごい
前作「消えた後継者」では出番の少なかったあゆみは本作で大活躍。
主人公の捜査に関わることも多く、あゆみ役・皆口裕子の可憐なキャラクターボイスを十分に堪能できる。
ほかの子に目移りしたけど、やっぱり本命はあゆみちゃんですな!かわいい!
犯人の独白シーンは感情が爆発しており、少しオーバーかな?と感じるところもあるが、全体的に声優のクオリティは高く、物語を魅力的なものにしていた。
小山力也が演じる《あのキャラクター》はどう考えても学生じゃないだろ!感がギャグに振り切っており、キャラクター造形と相まっておもしろかった。
システム面は親切設計
「うしろに立つ少女」は主にコマンド総当りとポイント&クリックを採用し、重要な人物を指摘する場面では人物一覧から選択する方式となっている。
1日の終わりに事務所で「推理する」でその日出来事を振り返り、「考える」で不自然なポイントを提示してくれるため、プレイヤーはある程度導かれながら捜査をしていく。
重要ポイントをまとめたメモで事件を振り返ることも可能だ。
推理が行き詰まることはないかもしれないが、あまりに親切すぎてプレイヤーが推理する間が減ってしまうのが気になった。
途中のセーブデータから再開すると、それまでのあらすじを皆口ボイスで教えてくれるなど、まさにいたれりつくせりの作り。
前作「消えた後継者」と同じく、オプション(コンフィグ)でレトロ設定への変更も可能。過去作へのこだわりがあるプレイヤーに一定の配慮がされている。
一気にプレイできるボリューム
クリアまでのプレイ時間はボイスを少し飛ばして5時間。
筆者は1日で一気にプレイした。
それぞれの章で区切りが用意されているが、引きが上手く作られているため、つい先が気になってプレイしてしまう。
総合評価
総評:まずまず
2./5
『ファミコン探偵倶楽部 うしろに立つ少女』はファミコン時代の名作アドベンチャーの全面リメイクタイトルだ。
ホラー要素はかなりマイルド。物悲しいシナリオには惹きつけられるものがある。
本作は複雑な味わいを残すタイトルになり得たが、説明が過ぎることで雰囲気を損なってしまった。
手軽で分かりやすいミステリーを好むプレイヤー向けのタイトルだ。
- 物悲しいストーリー
- クオリティの高いボイスとBGM
- ホラー要素はほぼなし
- 余計なエピローグ
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このページで使用している『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』のゲームキャプチャ画像はNintendo / TOSE CO., LTD. / MAGES. の著作物です。転載、配布等は禁止いたします。