『ダブルキャスト』は《見るドラマからやるドラマへ》をコンセプトにした「やるドラ」シリーズの第1弾で、アニメーションを多用しているのが特徴だ。
発売当時、ギャルゲー風の見た目とサイコスリラーなシナリオのギャップにダメージを受けたプレイヤーも多かったという。
シナリオやキャラクターのクオリティは高く、今プレイしても十分におもしろい。
この記事ではPS版『ダブルキャスト』のレビューをお届けする。
ジャンル | 恋愛アドベンチャー |
発売元 | SCE |
開発元 | Production I.G シュガーアンドロケッツ |
プラットフォーム | PlayStation PlayStation Portable |
発売日 | PS1:1998年6月25日 PSP:2005年7月28日 |
- サイコスリラーが好きな人
登場人物紹介
赤坂 美月

天真爛漫な女の子。自分の名前以外、過去の記憶を失っている。
主人公と共同生活をしながら、映研が制作する「かこひめの寝屋」のヒロインを演じる。
遥

映研の部長で主人公の先輩。
妖艶でお金持ちというハイスペックで、部員たちの面倒見もよい。
二村(ふたむら)

主人公の同期であり、悪友。
映研ではカメラ係を担当している。
佐久間

「かこひめの寝屋」で美月の相手役を演じる。
イケメンだが、女癖が悪いという噂。
剛田&花園

いつも遥(部長)のサイドにいるムキムキのボディーガード。
バッドエンドを迎えたときにはヒントをくれる。
ストーリー(あらすじ)
主人公は酔いつぶれていたところを介抱してもらったことをきっかけに赤坂美月と出会う。

記憶喪失で行き場のない美月に主人公は一緒に住むことを提案して、2人共同生活がはじまる。
その後、主人公は自らが所属する映研の主演女優に美月を推薦し、撮影がスタートするが、使われた脚本は撮影中に主演女優が亡くなったいわくつきの「かこひめの寝屋」だった。
引き込まれるシナリオと丁寧な伏線
序盤のラブコメっぽいシナリオを読み進めていくうちに、プレイヤーはいつの間にか狂気の世界に巻き込まれていく。
普段は天真爛漫な美月が時折見せる影はなんなのか……?
他の登場人物たちもそれぞれに「何か」含みがある。主人公が知らないことを彼らは知っているのではないか……?
主人公は少しずつ、違和感を感じるようになる。
違和感の正体は伏線だ。

エンディングまでたどり着くと全ての伏線が回収され、違和感がスッと解消される。
物語のキーとなる伏線はすぐ分かるものではつまらないし、難解であれば気がつきにくい。その点、『ダブルキャスト』はちょうどいい塩梅だ。なんでこのカットがあるんだろうというちょっとの違和感をシナリオに混ぜ込んでいる。
自らに危険が迫っていることは分かるが、その正体がつかめない展開はサイコスリラーの定番だ。
『ダブルキャスト』ではエンディングまでじわじわと迫ってくる展開もあれば、突然スイッチが切れたようにぷつりと途切れるバッドエンドもある。
分かりそうで分からないストーリー展開は早く真相を知りたいというワクワク感を掻き立てる。
たどり着いてしまえば推理パートはあまりにあっさりして、拍子抜けがするが、思考に時間を取られてしまうと入り込んでいた世界から離脱してしまうため、むしろ物語に没頭させるための策なのではないかと思ってしまう。
インパクトがあり、引きの強いシナリオと、読み手のことを考えた丁寧な仕込みが『ダブルキャスト』の面白さの核だ。
豊富なエンディング
『ダブルキャスト』は選択肢によってエンディングが決まるマルチエンディング方式を採用している。
エンディングの数は多く、
- グッドエンド:4
- ノーマルエンド:6
- バッドエンド:17
となっている。
バッドエンドから分かる隠された真実もある。
バッドエンド「かこひめの寝屋」では、ある人物の過去のエピソードが明かされる。ここではあまりにも胸クソな展開に、プレイヤーはショックを受けることまちがいなし。過去に起きた心中事件の真相に触れており、インパクトがある名エンディングだ。

番外編とノーマルエンドは物足りない。
その半分がやるドラシリーズの宣伝となっており、番外編であることを加味しても世界観を破壊している。宣伝を入れたいのであれば、「おまけ」に組み込んだほうがよかった。
クリア後に追加される選択肢もあるため、周回プレイは基本だ。
全エンディングを見るまでのプレイ時間は6時間ほど。スキップ機能のスピードが速いので、繰り返しプレイもそこまで大変ではない。

ディスク入れ替えが一番面倒だった
魅力的なキャラクター
『ダブルキャスト』に登場するキャラクターは魅力的だ。


アニメ『機動戦艦ナデシコ』で有名な後藤圭二氏が担当したキャラクターデザインは素晴らしく、それぞれが愛らしく描かれている。
たとえば、部長の大人っぽいセクシーさとノリの良さを併せ持つ姿はデザインとシナリオ、声優の水谷優子さんがそれぞれ作り上げたもので、その良さの集合体として優れたキャラクター像となっている。
チャラ男の佐久間や悪友の二村など脇役たちがなぜか憎めないのも、このゲームの魅力だ。
サウンド設定の物足りなさ
『ダブルキャスト』で不満だったのが、サウンド面だ。
コミカルなシーンに合わせたBGMはチープで可もなく不可もなし。
大きな問題はガヤガヤとした喧騒など環境音の音量で、バランスが悪く、環境音が大きい。そのため、キャラクターの音声が聞き取りにくい。
BGMと台詞・SEは音量調整が可能だが、台詞とSEの調整がひとまとめにされているため、環境音を下げるとボイスの音量まで下がってしまう。
せっかくの演技が十分に味わえないのが、もったいない。
総合評価





総評:非常に良い
4/5
『ダブルキャスト』は魅力的なシナリオとキャラクターを活かしたサイコスリラーアドベンチャーだ。
プレイヤーが違和感を持つか持たないか程度に伏線を上手く忍ばせ、エンディングまで一気に引っぱってくる。
豊富なエンディングは不必要に感じるものも含まれているが、バッドエンドのなかにも物語を補完する内容があり、繰り返しプレイすることで得られる満足感がある。
古いタイトルながら、秀逸なシナリオのおかげで全く色褪せない。サイコスリラー好きや、ありがちなギャルゲーに飽きたプレイヤーにおすすめしたいタイトルだ。
- 引き込まれるシナリオ、丁寧な伏線
- 豊富なエンディング
- 魅力的なキャラクター
- サウンド調整の甘さ



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このページで使用している『ダブルキャスト』のゲームキャプチャ画像はソニー・コンピュータエンタテインメントの著作物です。転載、配布等は禁止いたします。