『ANGEL WHISPER(エンジェルウイスパー)』はサスペンスアドベンチャーゲームだ。
忽然と姿を消したゲーム作家・由島。プレイヤーは彼の遺作「ANGEL WHISPER」をプレイし、その身に何が起こったのか、真相に迫る。
恐怖の大王・アンゴルモアをテーマにした作品を制作する意味、ゲーム制作中に起こった仲間の死、不審なEメールなど次々と起こる出来事と謎に翻弄されていくストーリーはスリリングで、その世界観にどんどん引き込まれていく作品だ。
この記事ではリメイク版『ANGEL WHISPER』のレビューをお届けする。
本記事はミスタ・ストーリーズ / Child-Dreamから商品を提供いただき、作成しています
あらすじ解説
物語は「これはあるゲーム作家の遺作です」という一文から始まる。プレイヤーがゲーム作家の娘・美瀬から依頼を受け、『ANGEL WHISPER』というゲームをプレイし、ゲーム作家失踪の真実を解き明かすことになる。
ゲーム会社・レムソフトで由島が任されたのは、ノストラダムスの予言に登場する恐怖の大王・アンゴルモアを題材とするゲームの制作だった。信頼できる仲間とともに制作に入った矢先の仲間の不審死、すべてを見通したかのようなEメール、既視感のある不可思議な夢、終末予言。謎が謎を呼び……。
1973年に出版された五島勉の著書『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)がベストセラーとなり、一躍有名になった。予言は「1999年7の月、空から恐怖の大王が降りてくる」というもの。具体的な内容が書かれているものではなかったが、そこから人類が滅亡すると話題になり、子どもたちを中心に恐れられた。(参考『オカルト怪異事典』 p.316-317(笠間書院 2021)
レビュー
物語が進むにつれ深まる謎と恐怖の終末
本作の魅力は終盤まで真相が読めないことだ。パズルのピースをいくら集めても、全体像はおろか犯人すらも読めない。由島とともに恐れを抱きながらゲームを進めていった。終盤に至るまでのミステリーパートはとても良かった。
ネタバレ(+で開く)
終末論的な結末は現実とリンクするところもあるが、陰謀論チックとも言える。正直なところ、筆者にはピンとこなかった。終末論は数々のコンテンツのなかで消費され、オリジナル版から20年以上の時を経た今では食傷気味だと感じる。プレイする時代が違えば、印象は変わったかもしれない。
この時代はこういうのが流行ったのよね。
遊びやすさは格段に向上、肝心な推理はプレイヤーの頭脳を駆使して
本作は画面に表示された行動を選択し、ストーリーを進めていくオーソドックスなコマンド選択式のアドベンチャーだ。行き詰まった場合は総当りでも糸口が見つけられる。
ストアページに「誰でも最後までプレイできる」と書いてあるとおりの親切設計で、移動時にはマップ左上に「ヒント」が表示される。ヒントを見る・見ないをプレイヤーに委ねられている。
プレイしやすいように最適化されているが、読み飛ばしプレイでクリアするのは難しい。ときおり挿入されるテキスト入力パートでは、それまでの物語を理解していなければ何を入力していいのか分からず、行き詰まってしまう。
この仕掛けによって、自ら推理しているという没入感を高めている。特段難易度が高いわけではなく、今までの会話で出てきた単語やゲーム内のウェブサイトで調べた情報があればクリアできる。
リメイクによってビジュアルやストーリーの一部がブラッシュアップ
リメイク版となる本作ではグラフィックが一新されている。
冒頭のストーリーにもかなり変化がある。オリジナル版では由島の関係者が、由島の家を訪れ、遺体を見つける衝撃的なオープニングから物語がはじまる。リメイク版では由島は失踪しており、娘の美瀬から『ANGEL WHISPER』をプレイしてほしいと頼まれる流れに変わっている。
それ以外にはBGMの追加やリマスター、ヒントの追加、コマンド選択の簡略化など、よりプレイしやすいように改良されていた。
オリジナル版でユニークな試みだったのが、作中で出てきたウェブサイトに実際にアクセスして、解決の糸口を見つける点だ。ウェブとゲームを行き来することで、フィクションが現実に侵食してくるように感じさせる部分だが、リメイク版ではゲーム内で閲覧できるようになっており、手軽さが重視されている。※ウェブサイト自体は現在も閲覧可能。
今の時代にそぐわない点もあり、受付係の女性に対する由島のセクハラっぽい言動やグラフィック担当のデニーをオカマっぽいと評する点は気になった。
オープニングを変えるなら、ここもアップデートしたほうが良かったかな。
プレイ時間は5時間半
筆者がエピローグを見終わるまでのプレイ時間は5時間半だった。
寄り道しながら遊んでいたため、ヒントを使って効率よくプレイすればもう少し早くエンディングまでたどり着けるだろう。
総合評価
『ANGEL WHISPER』は壮大なスケールのサスペンスアドベンチャーだ。
ノストラダムスの予言に登場する恐怖の大王・アンゴルモアをテーマにしたゲーム制作を発端に、次々と事件が起こるストーリーは謎が謎を呼び、引き寄せられるようにプレイしてしまう。
真相には賛否両論あるだろうが、20年以上前に作られた作品に現在とリンクする点があるのも確かだ。
サスペンスやオカルト、SFが好きなアドベンチャーファンはブラッシュアップされたリメイク版をプレイしてみるのも良いだろう。
- 謎が謎を呼ぶストーリー
- 一新されたグラフィック
- 賛否が分かれるエンディング
サスペンス
オカルト
SF
『ANGEL WHISPER』(リメイク版)
- 対応機種:Nintendo Switch
- 発売日:2023年9月28日
- 開発元・発売元:マメクジラ
- 企画制作:Child-Dream、ミスタ・ストーリーズ
- ジャンル:サスペンスアドベンチャー
- 筆者プレイ時間:5時間30分(エピローグまで)
- レビュー時のプレイ機種:Nintendo Switch (ver.1.0.1)
※2023年11月12日時点
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このページで使用している『ANGEL WHISPER』のゲームキャプチャ画像はマメクジラ / Child-Dream / ミスタ・ストーリーズの著作物です。転載、配布等は禁止いたします。