単純なホラー、ありきたりなミステリーゲームにはもう飽きた。
もっと、もっと、人の狂気が見たい。私は……そんなゲームに出会ってしまった。
『Tokyo Dark – Remembrance –(東京ダーク -リメンバランス-)』はCherrymochiが開発したホラーアドベンチャーゲームだ。
2017年にリリースされたPC版『Tokyo Dark』を基にSwitch / PS4に移植された。単なる移植ではなく、一部のエピソードが新たに追加されている。
イギリス出身のジョン・ウィリアムズが創設したインディーゲームスタジオ。妻の真保・ウィリアムズがプロデューサーとして関わり、チームで制作している。
ミステリー・ホラー要素が混合したシナリオはプレイヤーを不可解な世界へと引きずりこんでいく。
この記事ではPS4版『Tokyo Dark – Remembrance -』のレビューをお届けする。
ジャンル | ホラーアドベンチャー |
発売元 | Sony Music Entertainment Square Enix |
開発元 | Cherrymochi MEBIUS |
プラットフォーム | Nintendo Switch PlayStation 4 PC(Steam) |
発売日 | Switch:2019年11月7日 PS4:2020年1月10日 Steam:2017年9月7日 |
- 「SAN値」に反応する人
- オカルトが好きな人
- 胸クソ好きな人
ストーリー
主人公は警視庁の刑事・伊藤絢美(あやみ)。
彼女は失踪した恋人・田中一樹の行方を追っていた。
やっとの思いで探しあてた一樹は、女に捕えられ首元にナイフを突きつけられていた。
その女は半年前に死亡したはずのレイナだった……。
主人公の精神状態を数値化した《SPINシステム》
正気と狂気の狭間を進む主人公には《SPIN》というシステムが設定されている。
SPINは以下4つの項目の頭文字を取ったものだ。
- SANITY(正気度)
- PROFESSIONALISM(職業倫理)
- INVESTIGATION(調査能力)
- NEUROSIS(ノイローゼ)
それぞれのSPIN値は主人公の行動によって変動する。
たとえば、職務中に酒を飲んだり、気軽に銃を発砲するとPROFESSIONALISM値が下がっていく。
処方された薬を飲むとSANITY値が上がるなど。
SPIN値によって選択肢が変わり、シナリオが分岐していく。
精神状態をストーリーに反映させる試みはおもしろい。
11種類のイカれたエンディング
『Tokyo Dark – Remembrance -』は、オカルト要素をふんだんに盛り込んでいる。
錯乱する主人公、徐々に明かされる霊的な存在、古事記・神話世界にまでストーリーは広がっていく。リアルなストーリーを求めるプレイヤーには、非現実的で興ざめとなってしまうかもしれない。
オカルト好きには楽しめるはずだ。
11種類のエンディングの中には、初回ではたどり着かないエンディングや、攻略方法を知らなければ到底たどり着けないエンディングもある。イカれたシナリオばかりで楽しめた。
このゲームの良さは主人公(プレイヤー)の精神状態がシナリオに大きな影響を及ぼすことだ。
たとえば、ある人物に同情するのか、それとも許せないと思うのか。精神状態が悪化したままエンディングに突入したとき、そのままどん底に落ちていくのか、それとも踏みとどまるのか……。
どちらを選ぶも、プレイヤー自身の選択にかかっている。
アニメチックなグラフィックと陰鬱なBGM
『Tokyo Dark – Remembrance -』のキャラクターはアニメチックでかわいらしい。
主人公の絢美は芯の強さを感じさせるかっこいい女性だ。時折見せる可愛らしい一面や、徐々に精神が蝕まれていく表情など、ギャップもまた彼女の魅力の一部だ。
ちなみに絢美はフルボイスではなく、挨拶程度のボイスが与えられている。
街の描写もリアリスティックで良い。
薄暗い路地裏、メイドカフェや猫カフェが並ぶ秋葉原、怪しいネオンが光る歌舞伎町など、どれも魅力的だ。
時折挿入されるショートムービーもゲームを盛り上げている。
コートをひるがえし街を闊歩する絢美の姿、あるいは悪夢から飛び起きた絢美の不安げな表情など。
BGMも秀逸だ。全体的に陰鬱なBGMが流れており、単純に怖い。
終盤で流れる子どもの笑い声のようなものが入った曲は《最恐》だ。
秋葉原の店で流れる明るいBGMとのコントラストもおもしろい。
改良されたポイント&クリックシステム
アドベンチャーゲームでは、ポイント&クリックシステムは定番だ。
気になるところやアクションを起こしたいところをクリックしてストーリーを進める手法はアドベンチャーと相性が良い。
しかし、ポイント&クリックはPCマウスでのプレイに最適化されており、家庭用ゲーム機には向かない。
家庭用ゲーム機に移植された場合は、画面上の矢印を方向キーで動かすシステムに変更されるなど、操作性が悪かった。
『Tokyo Dark – Remembrance -』は家庭用ゲーム機が抱えるポイント&クリックの問題を見事に解消した。
対象のアイテムや場所に近づくと自動で対象にカーソルが現れる。
プレイヤーは方向キーで見る・入るなどコマンドを選択するだけだ。複数のカーソルが表示された場合はLRボタンを切り替えられる。
このシステムにより、操作が快適になっている。
ヒントが与えられている状態であるため、難易度としては少し下がる。
周回プレイ用の《New Game +》
『Tokyo Dark – Remembrance -』は初回では完全オートセーブとなっており、途中でセーブデータを残すことはできない。
しかし、1度クリアしたあとにプレイできる《New Game +》ではエンディングに影響のある箇所の前に、セーブポイントが設けられている(オートセーブもあり)
それにより、エンディング回収の手間を減らしている。
セーブできるのは6つまで。この手のゲームとしてはセーブスロットが少なめだ。
システム上で一番不便なのはメッセージをスキップできないこと。
周回プレイを前提としているにもかかわらず、何度も同じメッセージを読むのは苦痛だ。
さらにメッセージのログも確認できないため、うっかり聞き逃してしまった時は再度プレイするしかない。
この2つはノベルゲームの定番システムであり、なぜシステムに組み込まなかったのか疑問だ。
総合評価
総評:非常に良い
4/5
『Tokyo Dark – Remembrance -』は陰鬱な雰囲気のなかで、謎を解いていくゲームだ。
ストーリーはオカルトとサイコホラーの要素を兼ね備えている。霊やオカルトが苦手な人には受け入れられないだろう。
操作性は非常に良いが、メッセージスキップや過去のメッセージログが確認できないなど、一部不親切な面もある。
エンディングは11種類もあり、イカれた話ばかりで楽しく、全部のパターンを見たくなる。
特に胸糞好きな人におすすめだ。
- 良質なサイコホラー、胸糞あり
- 恐怖を増幅させるショートムービーとBGM
- 11種類の豊富なエンディング
- 操作性が良い
- メッセージスキップ、ログ機能がない
- セーブポイントが少ない
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このページで使用している『Tokyo Dark – Remembrance -』のゲームキャプチャ画像はCherrymochi / MEBIUS / UNTIESの著作物です。転載、配布等は禁止いたします。