『ソング オブ ホラー』は廃墟探索型の三人称サバイバルホラーアドベンチャーだ。
オルゴールから流れる《呪いの旋律》を聞いてしまったダニエルを軸に物語は進んでいく。
プレイヤーはオルゴールの秘密を解明しダニエルを救うため、魔物から逃げ惑いながら廃墟を探索して過去をさかのぼる時間の旅をする。
ステージによって異なる怪奇現象に見舞われ、物音を立てれば魔物を呼び寄せ、命の危険にさらされる。
ストーリーは重厚で、難解なパズルと共に恐怖のエッセンスを存分に楽しめる作品だ。
この記事では、私、黒いジョヴァンナがPS4版『ソング オブ ホラー』のレビューをお届けする。
ジャンル | ホラーアドベンチャー |
発売元 | EXNOA (公式サイト) |
開発元 | Protocol Games Raiser Games |
プラットフォーム (ストアリンク) | PlayStation 4 Xbox One PC(DMM/Steam) |
日本語対応 ※2022年3月14日時点 | PS4:◯ Xbox:◯ PC(DMM):◯ PC(Steam):◯ |
発売日 | PS4:2021年8月26日 Xbox One: 2021年10月21日 PC(DMM):2021年8月26日 PC(Steam):2019年10月31日 |
プレイ時間 | 33時間 |
- 廃墟が好きな人
- 不条理ホラーを好む人
- パズルマニア
ストーリー(序章)

出版社で働くダニエルは郊外にあるハッシャーの屋敷を訪れた。
人気作家のハッシャーは妻と2人の子ども、使用人夫婦と暮らしているはずだが、その日は留守のようだった。
ダニエルはどこからか聞こえてくるオルゴールの音色に導かれ、地下室に足を踏み入れた。
そこは《呪われた旋律》が作り出した異空間。この音楽を聞いた者はみな魔物に取り憑かれ、死の世界へと誘い込まれてしまうのだ。

ハッシャーというのは、エドガー・アラン・ポーの『アッシャー家の崩壊』へのオマージュね。
おもな登場キャラクター紹介
ダニエル・ノイヤー


43歳。事業を失敗し酒におぼれて妻と別れた後、断酒会に通い、立ち直りつつある。
現在は出版社に勤め、エティエンヌの秘書をしている。
エティエンヌ・バートランド


45歳。ウェイク出版の営業部長でダニエルの上司。
ソフィー・ヴァン・デネンド


40歳。ギャラリーの経営者。ダニエルの元妻。
別れた後もダニエルを心配し、助けようとする。
セバスチャン・P・ハッシャー


54歳。著名な歴史小説家であり、州立大学歴史学部の教授を務める。
エティエンヌ、ダニエルの勤務先である出版社と契約している。
プレイシステム
パーマデス(永久死)
第1章ではハッシャー家に潜入し、行方不明になったダニエルを探し救出するのが目標だ。
プレイヤーは営業部長のエティエンヌ、元妻ソフィー、使用人のアレクサンダー、ハッシャー家が契約する警備会社のアリーナから1人を選択する。
途中でキャラクターが死ぬと、生き返ることはない。ショッキングなパーマデス(=永久死)システムを採用している。
収集したアイテムはキャラクターが死亡した付近に鞄ごと落ちており、次のキャラクターに引き継がれる。


キャラクターを全て失った場合は章の始めからやり直すことになる。残り人数が乏しくなるほど孤独感がつのった。
章の終わりにキャラクターが1人しか残らなくても次の章では新たなキャラクターが補充され、常時3〜4人のメンバーがキープされる。
ダニエルが死ぬと章の始めからやり直しになるため、最後まで残すのが安全だ。
全体を通じ操作可能なキャラクターは13人いる。
このうち、エティエンヌ、オマーだけがマップ上のヒントを見通すことができる便利なアイテムを所持している。
マップ上にも少しのヒントがある
探索はポイントアンドクリック方式で行う。
- 鍵のマーク: 入手した鍵によって開けられる。
- 南京錠のマーク: 鍵では開けられない。大抵は後ほど反対側から開けられる。
- ×:最後まで開かない、開かずの扉。
- !: 死んだキャラクターがカバンを落とした位置を示す。
- ?: 危険箇所が示される。スルーしてアイテムを手に入れてから戻ってくる方が賢明な場合もある。
- 虫眼鏡:エティエンヌ、オマーのみ。収集すべきアイテムの位置を示す。
難易度が高すぎる
4種類の難易度から選べる


難易度は4段階ある。
最もやさしいモード(E.T.A.ホフマン)ではキャラクターが死亡すると、その直前のチェックポイントからやり直すことができる。
私は次にやさしいモード《M.R.ジェームズ》でプレイしてちょうどいいと感じた。



これ以上高速連打させられたら、ボタンが壊れるでしょ!
パズルの一部が難しすぎる
プレイ中、膨大な数のパズルを解くことになった。
人によって得手不得手があるだろうが、私が自力で解けなかったものは10もあった。
例えば……32の鍵の中から7つの条件の全てに除外される3つの鍵を選び出す。
見た目で金属かプラスチックか見分けるなどの困難な条件ばかりが示されており、自力では解けなかった。


少し考えてわからなければ攻略サイトを見た方がよい。
回廊を延々と迷わされる恐怖


第4章で訪れる修道院はマップが非常に複雑でプレイヤーを惑わせる。
回廊をまわるごとにカメラが回転し、どの方向に向かっているのか見失いやすい。
また石の壁や似たような聖人像が延々と続き、景色が変わり映えしないのも迷子になる理由の一つだ。
新旧2つの回廊は間にある食堂を通じ結ばれているが、食堂に入った瞬間にカメラアングルがぐるっと転回し真逆になるため、進行方向を何度も見誤った。
さらに納骨堂も2つの回廊を組み合わせた無限ループになっており、道順を覚えていかないと同じ道をひたすらさまようことになる。
多彩な怪奇現象と魔物と罠
様々な怪奇現象のほかに、ランダムに襲いかかってくる魔物や、特定のポイントに潜む罠がプレイヤーを脅かす。
度々現れる触手の怪物はラブクラフト作品のオマージュだろう。



第2章で入手した鍵についていた不気味なチャームは、クトゥルフ神話の邪神がモチーフね。
怪奇現象の多くはプレイヤーを脅かすだけで、なにもしなくても消える無害なものが多い。
廊下を横切る亡者の影や、ポルターガイスト(騒音)など。ステージによって異なる怪奇現象が忘れた頃に突如襲いかかり、プレイヤーを驚かせる。
何度もあらわれる現象もあるが、多くは一度きりのため「慣れる」ことがなく、毎回ビクッと震えた。
一方、ダークネス、サイレンス、アビス、レクイエムなどの魔物はそれぞれ対処方法が異なり、時間制限がある。


机の下やクローゼットに隠れて鼓動を抑え息を潜めてやり過ごす《ダークネス》と、ドアを開けて室内に入り込み触手で絡めとろうとする魔物は似ており、一瞬どちらか判断に迷う。
《ダークネス》のときは部屋を移動し逃げるために少々の時間的猶予があるが、ドアから入り込む触手は即座にドアを押さえないと手遅れになるため注意が必要だ。
新しい部屋に入る際は必ずドアに聞き耳を立て、なにか聞こえてきたら回避しなければならない。


例えば人のささやき声、魔物がうごめく物音など。1度通った場所でも怪しい場合があるため気は抜けない。
ヒントとしては、なにか聞こえるとキャラクターの表情が微妙に変化する。
他のキャラをプレイしているときは気づかなかったが、ダニエルをプレイしているときは表情の変化がわかりやすかった。
ドアの向こう以外にも「一発即死」の罠が度々仕掛けられているので警戒が必要だ。うかつに足を踏み入れてはならない場所が多すぎる。
物語が核心に迫るとき、異空間とつながり《マップ使用不可》となる。その間は特に心細く恐ろしかった。
感想
『ソング オブ ホラー』を直訳すると《恐怖の旋律》といったところだろうか。オルゴールから流れる《呪われた旋律》が物語の鍵となる。
シンプルなタイトルと裏腹に中身は濃厚だった。
私としては、思う存分に廃墟を探索でき楽しかった。
人気のないエリアを1人で歩き回る心細さ、罠が待ち構えているかもしれない恐怖。突如襲いかかる怪奇現象や魔物たち。集団で狂気に陥ったカルトの残骸など。あらゆるホラーの醍醐味が一粒にぎゅっと濃縮されている。
不満点は、
- パズルが難しすぎる点。
- しばしば進行不能なバグが発生する点。(1〜3章までにキャラクターが死んだ後、鞄を回収できないバグがあった)
- プレイヤーを迷わせるためにマップをわざと複雑にしている点。
特に第4章の舞台である修道院は非現実的とも言える作りだ。
最も重要な教会や修道院長の部屋へのアクセスが乏しく、ポツンと離れた場所にある。納骨堂への秘密のルートも常識はずれだ。
せっかく回廊があるのに生かされず不便な場所がいくつもあり、無駄に行ったりきたりして膨大な時間を費やした。
修道院はこの半分のボリュームでも十分楽しめただろう。6時間かけて探索した後に難しいパズルがあり失敗してキャラクターが全滅したときは絶望を味わった。
プレイヤーは難しいパズルを好むか、方向感覚に優れている、このどちらかの条件がなければ苦痛だろう。



私は4章で飽きた!



景色が変わらなかったよね……。
私は方向オンチだから人一倍時間がかかった自覚があるわ。
逆にこれらの欠点さえなければ、ストーリーのおもしろさ、ホラーとしての完成度はパーフェクトだった。
謎を解くためにオルゴールの出どころを追って過去をさかのぼり、手がかりを求めて廃墟を探索する。
章ごとに探索する場所が変わるため体験は変化に富んでいる。その場所にちなんだ怪異に遭遇するのも楽しかった。
探索中につぶやくコメントは人によって少しずつ異なる。その人の私生活や教養が垣間見える部分だ。
一人一人が性格に厚みを持っており、予約特典の「キャラクターガイドブック」を見ることで、より理解が深まり、おもしろかった。



「キャラクターガイドブック」はもう手に入らないかも……
キャラクターの特性を考えてプレイ順を選んだり、生き残ったキャラクターが後のストーリーに絡んでくるのも楽しみの一つだ。
結末は1つ。最後の最後にプレイヤーを「あっ」と言わせる驚きがあって良かった。
クリアまでに時折攻略サイトを参照しつつ、方向オンチかつ、操作に不慣れな私の手で33時間を要した。
総合評価





総評:非常に良い
4.5/5
『ソング オブ ホラー』のストーリーのおもしろさ、ホラーとしての完成度は抜群だ。
無人の邸宅や廃墟といった舞台装置もバリエーションに富んでおり飽きなかった。
進行不能なバグなど欠点もあるが、全体としては細部までの作り込みがすばらしく、長時間にわたり楽しめた。
全ホラーファンにおすすめしたい超優秀作品として強めに推したい。
- ストーリーが重厚
- 廃墟の雰囲気がよい
- 恐怖のバリエーションが豊か
- パズルで頭を使って楽しい
- 進行不能なバグ
- パズルの一部が難しすぎる
- 4章のマップが複雑で攻略に時間がかかる



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