『探しものは、夏ですか』はノスタルジックなノベルアドベンチャーゲームだ。
帰省した主人公は懐かしの駄菓子屋で見知らぬ女の子と出会う。彼女の探しものを手伝ううちに幼少期に喧嘩別れした少女を思い出す。
見知らぬ女の子が探すビー玉、村で起きている神隠しの謎、消えた少女の謎。さまざまに交錯する謎と少し苦味のあるストーリーが印象的なボーイミーツガールな作品だ。
本作は2018年にフリーの短編ノベルゲームとして公開された後、2020年にスマートフォン版、2023年にコンシューマ版(Steam版もあり)がリリースされた。コンシューマ版ではスマートフォン版に描き下ろしのスチル(イベントCG)とキャラクターボイス、特典エピソードが追加されている。
この記事ではKEMCOからリリースされたコンシューマ版『探しものは、夏ですか』のレビューをお届けする。
本記事はKEMCOから商品を提供いただき、作成しています。
あらすじ
2018年、夏。ひさしぶりに帰省した空木恭平は、むかし通った駄菓子屋の様子を見に行く。
主を失った店はもぬけの殻になっているはずだったが、店内には女の子がいた。
中を覗いたとして警察に突き出すと脅された恭平は、女の子に言われるがまま、「ビー玉探し」を手伝うことになる。
ビー玉を探して村を歩いていた恭平は「少女の失踪事件と神隠し」の噂を耳にする。そして以前いなくなったある少女との記憶が蘇る。
登場キャラクター紹介
織原 真琴 (CV.魚住 凛菜)
駄菓子屋で生活している少女。
亡くなった駄菓子屋のおばあさんとは知り合いのようだが……。
空木 恭平 (CV.佐野 裕理)
本作の主人公。
両親は離婚している。普段は父親と暮らしているが、今回は母方の実家に帰省。
進学した大学に馴染めず、母方の祖父との関係もギクシャクしている。
レビュー
紐解かれる過去と謎
数日前に起こった少女の失踪事件や神隠しの噂、12年前に恭平の前から姿を消した女の子、真琴が探すビー玉。物語が進むにつれてさまざまな謎が浮かび上がってくる。
恭平は記憶のなかにいる少女の手がかりをつかむために、調査をはじめる。地道に記憶の欠片を拾い集めていくと、それぞれの謎がつながりを見せ始める。
真相までの道のりには想定外の展開もあり、結末が気になって一気にプレイしてしまった。
本作には4つのエンディングがあるが、グッドエンディングに到達するまでの他の3つのエンディングがストーリーを相互に補完する作りになっているのもおもしろかった。
ネタバレしちゃうと楽しさが半減しちゃうから多くは語れない!
テキストは平易で読みやすいが、時系列が複雑になる箇所がある。そのあたりはテキストなり、チャートで整理されていたら本作をより深く楽しめただろう。
私は自分でメモって解決した!
フローチャートが用意されており、選択肢からやり直したり、過去にどんな話をしていたか見返せるのが快適だった。
家族とふれあいを通して成長する物語
本作は単なるラブストーリーではなく、周囲の人々とのふれあいから恭平が成長していく物語でもあった。
家族や他の大人たちとの交流を通して、恭平は気づきを得る。それらはグッドエンディングには欠かせないものだ。
作中で特に重要と言えるのは恭平と祖父の関係だ。2人きりになると居心地が悪く、その場から逃げたくなるほど、恭平は祖父に対して苦手意識を持っている。
2人のやり取りを見ていると、恭平は祖父に何を言われるのか、どう答えればいいのか分からないという恐怖心を持っているように見える。これは恭平が自己を確立できていないことを強く印象付けている。
今まで打ち解けられなかった祖父と対話することによって、恭平は殻を破り、1歩進めるようになる。それが物語の鍵になっている。
ツンツンツンデレ!ヒロイン・真琴
ヒロイン・真琴はひたすらツンツンしている。強引な言動で恭平を振り回し、しょっちゅう脅してきたり、嫌味を言ったりもする。
筆者はツンデレ好きだが、それにしてもツンツン度合いがかなり高い。中盤過ぎまでこのヒロインを好きになれるんだろうかと不安だった。
恭平も売り言葉に買い言葉だから、余計にヒートアップするんだけど……。
しかし、長かったツンツン期によって終盤の激甘展開を生み出されるとは……。
こ、これは、甘みを引き出すための塩……!
最後には真琴が大好きになっていること間違いなし。本作は至高のツンデレゲーでもある。
プレイ時間は3時間10分とコンパクト
筆者のプレイ時間は3時間10分だった。
ときおりボイスを飛ばしつつ、特典エピソードまで見た時間だ。
本編自体のエピローグは短めなので、特典エピソードで余韻が味わえるのが良かった。
時系列が複雑なので、一気に遊ぶのがおすすめ!
総合評価
『探しものは、夏ですか』は夏のさわやかさを感じさせるノベルアドベンチャーだ。
帰省した主人公が見知らぬ少女と過ごしながら、村で起きている失踪事件や自らの記憶のなかの少女などの謎を解き明かしていく。
家族との関係や幼少期の後悔など、苦味のある部分もあるが、それを乗り越える物語は読後感が良い。
ツンツンした真琴に対して苦手意識を持ってしまったが、終盤に見えてくる素顔がかわいらしく、一気に魅了された。
カラッとした夏のボーイミーツガールを味わいたいプレイヤーにおすすめのタイトルだ。
- 興味の尽きない謎
- 恭平が成長していくストーリー
- ツンツンしている真琴
- 一部分かりにくい時系列
ビジュアルノベル
青春
ツンデレ
『探しものは、夏ですか。』
- 対応機種:Nintendo Switch、PlayStation 4 & 5、Xbox One & Series X|S、PC、iOS、Android
- 発売日:2023年8月25日(コンシューマ)、2023年9月20日(Steam)、2020年8月14日(iOS)、2020年8月17日(Android)
- 発売元:KEMCO
- 開発元:スタジオワンダーフォーゲル
- ジャンル:恋愛アドベンチャー
- 筆者プレイ時間:3時間10分(特典エピソードまで)
- レビュー時のプレイ機種:PC (Steam)
※2023年10月15日時点
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