『沼落ち禁止(Love Too Easily)』はMonster Guideが開発した韓国発のアドベンチャーゲームだ。
プレイヤーは酔って誰かとキスしてしまったイ・ヨヌとなって、キスの相手を探し出す。映像の合間に表示される選択肢から行動や会話を選ぶインタラクティブムービーだ。
実際にプレイしてみると、画面に向かってツッコミを入れてしまうほど、ボケまくる映像の連続。コメディの比重が大きく、笑える作品だった。
この記事では『沼落ち禁止』のレビューをお届けする。
- コメディが好き
- 韓国ドラマが好き
あらすじ
女子大学生のイ・ヨヌは居酒屋で先輩や幼なじみと楽しく呑んでいた。
お酒が回り、酔いを醒ますために店から出たとき、追いかけてきた誰かにキスされる。
翌日、ヨヌが自宅で目を覚ますとスマホに着信が入る。画面に表示されたのは「イ・ヨヌ」。キスの相手とスマホが入れ替わっていたのだ。
ヨヌはキスの相手を見つけ出すため、家を出るのだった。
登場人物
イ・ヨヌ
23歳。
恋に落ちやすい女子。
イ・ジェハ
25歳。先輩。
秀才。MBTI(性格検査)を好んでいる。ヨヌにだけ冷たい。
カン・イェジュン
25歳。先輩。
誰にでも笑いかける、女子たちに人気の陽キャ。
ハン・サンミン
23歳。ヨヌの幼なじみ。
いつも張り合ってくる弟的な存在。
ユ・ソリン
23歳。ヨヌの幼なじみで親友。
ノリが良い。
レビュー
ツッコミ待ち?ボケまくりラブコメディ
プレイする前、本作はラブロマンスだと思っていた。だが、実際には物語のほとんどがツッコミありきのコメディだ。
たとえば、ヨヌがイェジュンのアルバイト先を訪れるシーン。
- イェジュンはカフェで働いているのに作れるメニューがほとんどない
- 肩ひもが落ちまくるエプロン
- 部外者のヨヌに店番を任せる
イェジュンの仕事ぶりに「おかしいでしょ」「ヤバいでしょ」とツッコミたくなるし、「この人なんなの」と文句も言いたくなる。同じようなシーンが続くうちに、ツッコミを入れることが楽しくなってきて、今度はどんなボケをかましてくるのか気になってしまう。
ツッコミどころをわざと作ることで、ついついリアクションしたくなるゲームになっている。
ゲーム配信者がツッコミを入れながら遊ぶといい感じになりそう。
ラブより友情の密度が濃いめ
ヨヌは惚れっぽい女性とされているが、作中で描かれるのはお酒を飲んではしゃぐのが好きな女性だ。過去の奔放な恋愛遍歴が明示されるわけでもなければ、その場で手当たり次第に食い荒らしているわけでもなく、”軽い女性”には見えない。
ずっと冷たい対応をされていたのに、ジェハのキスをかんたんに受け入れるの?家にも自由に出入りできる関係で、弟みたいな存在だったサンミンと急に恋愛できるの?など、作中で明示されるキャラクターの設定とは相反すると思える描写が多く、恋愛ものとしてはリアリティが薄いと感じた。
ヨヌと親友・ソリンのやり取りはノリが良くておもしろい。
特に気に入ったのが電話のシーンだ。ヨヌが持っていたキス相手のスマホにソリンから着信が入る。「本当にヨヌなのかを確かめる」といろんな質問をしてくるなかで、ピー音連発の口汚い罵り合いに発展し、やっとヨヌ本人だとわかってもらえる。
波長が合った掛け合いはテンポもよく、2人が気のおけない関係なのが伝わってきた。
ヨヌとソリンに関する描写には気になるシーンもあった。
ヨヌがキスの相手について相談すると、ソリンはもう一度キスして見れば分かるから「私としよう」と唇を突き出してくる。それに対してヨヌは「変なこと言わないで」と突き返す。
シンプルに百合路線でも良かったのに……。
ちょっと残念。茶化すようなことではないわね。
繰り返し遊んでしまうミニゲーム
本作の特徴といえるのがミニゲームだ。
定番のミニゲームだけでなく、ストーリーの流れを反映させたミニゲームが多い。
ラーメンを食べようとすると調理のリズムゲームがはじまり、部屋に閉じ込められると脱出ゲームがはじまるなど、ミニゲームの内容はバラエティに富んでいておもしろい。
ミニゲームが差し込まれることによって、映像を見るだけになりがちなインタラクティブムービーのちょっとした気分転換になる。
筆者が特に気に入ったのは以下の2つ。
1つ目はヨヌがメイクをするミニゲームだ。指示通りにメイクアイテムを選んで、ドラッグして塗るだけなのだが、工程が細かい。
メイクのスタイルを選んだらファンデーションを塗って、コンシーラーを塗って、アイシャドウを重ね塗りして……と手順を踏んでいく。シンプルだが、細かい工程があるおかげでヨヌのメイクが徐々に出来上がっていくのが見られて楽しい。
2つ目はカフェでバイトするゲーム。席を外したイェジュンの代わりにヨヌがお客さんから注文を受けてドリンクを作る。
画面に表示されたドリンクの材料を作業台に持ってきて、氷やエスプレッソはマシンから出して準備する。制限時間があるため、氷がマシンから出てくる間に他の材料を持ってくるなど効率を考えて作業しなければならない。
作業ゲーム好きの筆者はミニゲームだけを繰り返し遊んでしまった。
見覚えのあるお片付けゲー風味の探しものゲームや突然のRPGまでジャンル横断しまくってるよ!
終盤にはキスの相手を当てる推理パートがある。
ヨヌが覚えている記憶の断片と、これまでに集めてきた証拠をセットにして、候補者に提示してキスの相手だと認めさせなければならない。
正しいセットを3つ提示すれば成功となる。推理自体の難易度は低く、きちんと証拠集めをしていれば、誰でもクリアできるだろう。
推理途中にジグソーパズルとかもあるよ!
システムはほぼ快適、周回プレイではやや不満あり
本作には12個のエンディングがある。1人の男性とのハッピーエンドだけでなく、さまざまな展開が待ち受けている。いろいろなエンディングを見るためには周回プレイが必須だ。
周回プレイで感じたのが、スキップ機能の不便さ。
キーボードのTabキーを押すと映像がスキップできるが、数秒飛ばせるだけ。次の選択肢まで飛べるわけではない。連続してスキップできないのも不便だった(10秒程度待てば再度スキップ可能)。
スキップ以外は快適だ。
ヨヌの手帳のなかにはいろいろな情報が詰まっている。キャラクターの情報、実績、エンディングリストといったゲーム的な要素が見やすくまとめられている。メイクのミニゲームが反映されたルックブックまで載っている。
進行時点までのあらすじがヨヌの日記としてまとめられているのもおもしろかった。プレイ間隔がしばらく空いてしまっても、手帳を見ればストーリーがすぐに思い出せるだろう。
フローチャートは選択肢の分岐がひと目でわかるように作られており、エンディング回収がしやすかった。
筆者がすべてのエンディングを見るまでにかかった時間は7時間半だった。フローチャートを確認しながらプレイできたおかげで、全エンディングまで早くたどり着けたと思う。
ローカライズはほぼ問題ない。少しこなれていないところがあるぐらいで、プレイに悪影響はなかった。
『沼落ち禁止』っていうほど沼深くないわよね。
ネットミームを使ってみたかっただけやぞ!
総合評価
総評:良い
3.5/5
『沼落ち禁止』はラブコメとミステリーを組み合わせたインタラクティブムービーだ。
恋愛感情の描写は希薄で、ラブロマンスとしては物足りないが、ツッコミどころ満載のコメディとしてはおもしろかった。
映像のスキップ機能の使いにくさは気になったが、システム自体は親切。ストーリーに沿ったミニゲームは単体でも楽しめた。
細かいことは気にせず、流れる映像にツッコミを入れて楽しめるコメディ好きならプレイしてみてもいいだろう。
- 笑えるボケ倒し型コメディ
- 単体でも楽しいミニゲーム
- ラブロマンスとしては物足りない
- 不便なスキップ
『沼落ち禁止(Love Too Easily)』
- 対応機種:PC
- 発売日:2023年8月25日
- 開発元:Monster Guide inc.
- 発売元:MediBang Games
- ジャンル:恋愛アドベンチャー
- 筆者プレイ時間:7時間30分
- レビュー時のプレイ機種:PC (Steam)
※2024年1月14日時点
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