『Home:家に』は、父親の暴力から逃れて橋の下で野宿生活を送る青年が、ギターを弾きながら過去と向き合っていくアドベンチャーゲームだ。
虐待の過去を断罪するのではなく、フラットに見つめながら前へ進む。主人公の感情はすべて弾き語りの曲に込められており、音楽が物語の核となっている。
この記事では『Home:家に』のレビューをお届けする。
野宿しながら、ギターと共に過ごす日々
本作の舞台は、2014年の韓国・釜山(プサン)だ。
主人公は父親とふたりで暮らしていたが、度重なる暴力を耐えかねて家を出る。愛用するギターを背負った主人公が向かった先は、人目につかない橋の下だった。

暖を取る材料を集めてきて、野宿をはじめる。寒空の下で弾き語りをしたり、声をかけてくれる人と交流したり。今までの人生を振り返りながらその日その日を過ごす。

横スクロール型のアドベンチャーで、主人公を操作して移動したり、アイテムを集めながら、会話を通じて物語を進めていく。
音楽ゲームや作曲パズルといったミニゲームも組み込まれており、単にテキストを読むだけではなく、能動的な操作が求められる。

淡々と描かれる過去と感情があふれ出す弾き語り
本作は主人公が家を出るところからはじまる。最初は父親の暴力から逃れるためだと思っていたが、徐々に主人公が置かれた状況が分かってくる。
日中はギターを弾いたり、寝床を整えたりして過ごす。夜になると夢の中で過去が明かされていく。提示されるエピソードはどれも苦しいものだが、主人公の振る舞いは淡々としている。
しかし、淡々と受け止めているからといって、悲しみを感じていないわけではない。感情を発露するか、静かに受け止めるか、性質の違いだ。


本作は制作者の実体験を基にしていると明かされている。
主人公が受けた仕打ちは決して許容できるものではなく、センセーショナルな演出で怒りを煽ることもできたはずだ。実際、過去のエピソードが語られるたびに、筆者は大人たちへの憤りと無力感を覚えた。
それでも本作が過去を淡々と描くのには理由がある。
主人公が周りにいた大人たちを断罪することに執着すれば、物語は後ろ向きになる。酷い目に遭った事実は消えないが、それでも前を向く姿を描くことで、怒りに飲み込まれずに未来へつながる物語として成立している。この物語自体が制作者の癒やしの過程を表現したものと受け止めた。

本作のエモーショナルな要素は、すべて弾き語りの曲に込められている。
やさしさと力強さを併せ持つ歌声、パッションのこもった荒々しいギター、孤独や愛、父や母を歌った歌詞。楽曲からありったけの想いが感じられる。
主人公がギターを手放さないのも、歌手を目指すのも、音楽こそが自分の気持ちを表現できる唯一の方法だからだ。弾き語りのなかで気持ちが昇華されているからこそ胸に響く。


収録楽曲はYouTubeでも聞けるけど、当然サントラ買っちゃうよねー!名曲揃いだもの。
主人公を尊重し、そっと寄り添う大人たち
主人公を気遣う大人がふたりいる。
ひとりはおじいさんだ。主人公を「先生」と呼び、ギターを習い始める。折に触れて差し入れをしたり、主人公の身に危険が迫ったときはさりげなく手助けしたりもする。


もうひとりは主人公の弾き語りを聴いてファンになってくれた女性だ。自分の音楽に自信が持てない主人公を励まして応援してくれる。


ふたりに共通しているのは、主人公を尊重し、敬意を持って接している点だ。
どちらも主人公より年上に見えるし、おじいさんからすれば孫のような年齢のはずだが、きちんと敬語で話してくれる。状況を見極めて、助けは必要かと聞いてくれるが、申し出を断られたら深追いしない。主人公の意思を第一に考えている。ふたりの接し方は主人公の自分本位な親と対比されており、大人はこうあってほしいというお手本のように思える。
ふたりとも主人公を手助けしてくれるシーンがあるが、助けてあげたというような偉そうで押しつけがましいところは一切無い。ただ主人公が必要とするときに必要なことを必要な分だけ与える。そうして主人公にそっと寄り添ってくれる大人がいることはなによりも心強く感じた。
寝床で一緒にいてくれた猫ちゃんとイッヌもありがとね!


ミニゲームの難易度は高めだが、モード選択で調整可能
本作には音楽関連のミニゲームが複数含まれているが、プレイヤーによっては難易度が高く、ストーリーに集中しにくい場合がある。
弾き語りシーンの音楽ゲームは、表示されたキーを押さえながらノーツを叩くスタイルだが、操作に集中すると歌詞や曲に意識が向きにくい。音楽が物語の核である本作において、この点がもったいない。


作曲パズルやギターレッスン、追いかけっこシーンの音ゲーなど、他のミニゲームは比較的クリアしやすい難易度に調整されている。
ギターのコード表が出てきたり、指板を押さえる場所を探すのがゲームになっていたり、ギターに絡めたミニゲームが多いね。






ミニゲームが苦手な場合は、ゲーム開始時に「ストーリーフォーカスモード」を選択することで難易度が下がり、パズル要素がスキップされる。物語に集中したいプレイヤーには、このモードを選ぶと良い。
総合評価
総評:傑作
5/5
『Home:家に』は、ひとりの青年が未来へ向かう物語だ。
主人公の感情はすべて音楽に込められており、弾き語りの楽曲はどんな言葉よりも雄弁に想いを伝える。
虐待の過去をセンセーショナルに描くのではなく、フラットな視点で向き合い、前を向く力強さを描き切った傑作だ。
- 感情がほとばしる素晴らしい音楽
- 過去を冷静に見つめ、未来へ向かう物語
- 主人公を尊重し寄り添う人たち
とくになし
『Home:家に』
- 対応機種:PC
- 発売日:2025年11月21日
- 開発・発売元:Mr.Spoon
- ジャンル:アドベンチャー
- 筆者プレイ時間:2時間(エンディング到達まで)
- レビュー時のプレイ機種:PC (Steam)
※2026年1月12日時点
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