『狂気より愛をこめて』は会話がかみ合わないイケメンたちと恋愛するアドベンチャーゲームだ。
主人公は転校先の学園で、罵倒してくる少年や謎言語・意味不明な言葉をしゃべる男たちと1年を過ごし、恋をする。
会話を主とする恋愛アドベンチャーゲームなのに会話が成り立たない。デタラメに思える設定でありながらも、4人の強烈な個性や主人公の強引なトーク力、意外性のあるストーリーによって、魅力ある作品になっていた。
この記事では『狂気より愛をこめて』のレビューをお届けする。
本記事はPLAYISMから商品を提供いただき、作成しています。
レビュー
「なんだこいつ……」→「あ、好き……」クレイジーな4人のメンズに翻弄されちゃう
本作は主人公が学園で出会う4人の男たちと1年間の交流を通じて、結ばれるまでを描いている。
会話中に現れる選択肢のなかで、相手の好みにあったものを選ぶと好感度が上がり、最終的に各キャラクターの個別エンディングに入る、恋愛アドベンチャーゲームとしてはオーソドックスな作りだ。
主人公は私立古詩庵歌羅芽琉院学園の2年生。通っていた学校が爆破され、転校してきたばかりだ。
いやちょっと待て、爆破とは?とツッコみたくなるところだが、細かいところをひろっていてはいつまで経っても終わらない。先にキャラクターを紹介したい。
佐伯祐介
金髪にピアス、着崩した制服などチャラい要素をコンプリートしたイケメンチャラ男。主人公と同じクラスで、転校前も同じ学校に通っていた。
「幕府のためにもピヨピヨスープ」「もちもちジャンバラヤ」など会話の内容とは1ミリも関係ない意味不明なことを言ってくる。
ゲームで無邪気に遊んでいるところや主人公の袖を引っ張ってくるところなど、かわいい仕草もあり、ちょっとヤンチャだから見守ってあげなきゃと思ってしまう子犬系男子だ。
拾い食いもしちゃうしね……ちゃんと見ててあげないと……。
荒川修司
髪にタツノオトシゴが絡まっている学園の保健医。
「ボクが300円玉でフロアタイルのみぞを酸化させてあげます」……やはり何を言っているのか分からない。
粘度が高すぎるねっとりボイスに性格が現れている大人の男性だ。
荒川先生はすぐ脱ぎたがるんだよな……。
アオルタ
成績優秀でクールな生徒会長。転校してきたばかりの主人公を心配してくれるし、勉強を教えてくれるイベントもあって、面倒見の良さにキュンとくるタイプ。まあ謎言語をしゃべるため、何を言っているかは分からないんだけど。
実はある方法を使うと先輩が何を言っているか分かるようになるので、本作で一番理解しやすいキャラクターでもある。
ネタバレ注意:アオルタの言葉の解読方法(+で開く)
バックログを見るとアオルタのセリフがひらがなで書かれている
いやこれ触手プレイでは……?
違います。うなぎです。
田村マシュマロ
校舎裏でよく会う少年。食いしん坊で、いつも主人公の食べ物を狙っている。会話のスタイルは99%罵倒で、「社会ゴミのストーカー野郎」「息をするな、下郎が」「おい豚クズ下僕」など豊富な語彙を活かしてひたすらご褒美をくれる。
私、田村マシュマロくんに惚れてしまいました……。
マシュマロくん……もっと罵ってください!
ピンクの髪に麻呂眉、かわいいお顔のちっちゃなお口から放たれる罵倒の数々。はじめて交わした言葉は「あし、なめろ」これは全プレイヤーがマシュマロくんの虜になることは想像に難くない!
普段は罵倒してくるのに、やさしさが垣間見えたり、甘えん坊な一面もあり、そのギャップに私はやられてしまった。
一緒に夏祭りに行ってマシュマロ様にブルーハワイ的なかき氷を奢る機会を頂戴したり、急に口を開けて舌を見せてくれるサービスまで!ああ、ありがとうマシュマロ様ー!!
その代償に靴を舐めさせてもらった!!
キモ!
主人公のつよつよメンタルがもたらす心地よさ
際立った個性を持つキャラクターたちのなかで、主人公も負けていない。
分け目を変えると言い出した荒川先生に「立ち絵も書き直さないといけないからやめてくれ」とメタ発言をしたり、アオルタとディナーを食べているときにホワイトソースを飛ばしてしまい、「美しい顔面や服装に私の白いあれをかけてしまった…」と下ネタをぶっ込んできたりと言動のクレイジーさは他の面々に負けていない。
全員変人。
『ア◯トレイジ』ネタはやめなさい!
主人公を含めてヤバい人だらけの学園生活で、相手の言っていることが理解できないことにストレスを感じるのでは?と思っていたが、それは杞憂だった。
返答が意味不明なワードか罵倒の2択になるキャラクターに対して、主人公が受け身にならずにこういうことだよね、うなずいてるからOKってことだねと会話を強引にリードしていく。主人公のおかげで大体の会話の流れが分かるため、意味不明なことへの不快感はあまりなかった。
意外と会話のテンポ感も良く、テキストやボイスを受け流すようにプレイでき、心地よさを覚えた。
あなたが狂気に入り込んじゃったんじゃないの?
ひよこマラカス そよ風をそえて (by佐伯)
狂った世界に隠された本当の狂気
変なキャラクターだらけ、クラゲや魚が浮いている教室、謎の学園行事・うなぎとばし大会と本作は意味不明なものだらけだ。
とにかくノリで押し切ってハッピーみたいな展開を迎えるかと思いきや、かなりの確立でダークな展開を迎える。それもかなり分かりやすい形で。
私の大好きな胸クソ展開!
はっきり言うな!!
各キャラクターとも、普段見せている陽気な顔の裏に重たいものを抱えており、それが終盤になって明かされる。
今までのフニャフニャした学園生活でゆるい空気感を十分に作り上げてから、一気に緊迫感が漂う展開になだれ込む作りはインパクト抜群でかなりの驚きがあった。伏線が分かりやすいものもあれば、唐突に感じる展開もあり、好き嫌い分かれるだろうが、私はかなり好みだった。
ただ、事実が明かされた後にすぐエンディングを迎えてしまうため、ヒリヒリするような展開をもう少し味わいたかった。
各キャラクターのエンディングは2種類で、どちらも胸クソエンディングを迎えるキャラクターもいるため、耐性がない人は注意が必要だ。
エンディング曲が良くて、いい感じに余韻に浸れた!
総合評価
『狂気より愛をこめて』はかなり特殊な恋愛アドベンチャーゲームだ。
会話が噛み合わないどころか何を言っているのかすら分からないキャラクターを含む4人の男たちと過ごす学園生活は荒唐無稽。しかし、主人公の強引なトーク力やノリの良さによって会話がテンポ良く流れる、不思議な楽しさがあった。
コミカルさに全振りしていそうな雰囲気を出しつつ、ストーリーにはダークな展開やサスペンス的な一面もある。終盤まで飽きさせない、ヘンテコな魅力あふれる作品だ。
田村マシュマロくん、マジでかわいいー!
- 個性が振り切ったキャラクター
- 小気味よい会話のテンポ
- 意外にダークなストーリー
- 少し唐突なエンディング
ビジュアルノベル
BL
乙女
サイコ
コミカル
『狂気より愛をこめて』
- 対応機種:PC
- 発売日:2023年7月18日
- 発売元:VampireK.K. / PLAYISM
- 開発元:じゃむさんっぽいど / VampireK.K.
- ジャンル:恋愛アドベンチャー
- 筆者プレイ時間:5時間(全エンディング到達時間)
- レビュー時のプレイ機種:PC (Steam)
※2023年8月20日時点
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