『Until Then』エンディング考察|なぜ再会は描かれなかったのか?

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『Until Then(アンティルゼン)』評価・レビュー・感想

『Until Then』は、フィリピンをモデルにした世界で、高校生たちの変容する日常を描いたアドベンチャーゲームだ。

エンディングを迎えたあと、あの結末をどう受け止めればいいのか考え続けている人は多いのではないだろうか。なぜマークとニコールの再会は描かれなかったのか。ルイーズの装置は何だったのか。タイトル『Until Then』は何を示しているのか。本記事ではそれらを読み解いていく。

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この記事は結末の重要なシーンのネタバレを含みます。

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執筆者
クロジョプロフ(左)

クロジョ
オカルト、サスペンス、実話系怪談、禍話を愛するホラーマニア。ホラー専門ブログ『奇怪文庫』を運営している。

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最後の最後に描かれなかった「再会」

ゲームを終えて、私がショックだったのは「あれだけニコールとの共同作業をやらせておいて、最後はニコールと出会わずに終わるんかーい!」ということだ。

物語の要点をざっくりまとめると、マークとニコールは何十回ものループの末に、ニコールが作った音楽を完成させ、時間のもつれを正し、壊れた世界を修復して最終的に「大災害がなかった世界」にたどり着く。

その世界で、ニコールは故郷で平穏に暮らし、マークと出会わないまま大人になる。そしてある日、それぞれが別の相手とデートをする。同じカフェの隣同士のテーブルで。

そこで、どのようにしてふたりが再び接近したのかは描かれていないが、エンドロールの最後に「マークがすごいデートをしたんだ」と母親の墓前でマークの父親が言う。

『Until Then』エンディング考察|01

それによって、ふたりがカフェで出会い、恋に落ちた(らしい)とわかるが、その場面をあいまいにして、はっきり描いていない。

初見ではこの点が不満だったが、物語全体を俯瞰してみると「肝心の場面を映像としてはっきり見せない」手法はあちこちで使われている。

たとえば、

  • マークの母が飛行機事故にあったこと。
  • ニコールの親友ジェイクになにがあったのか。
  • この国にどんな災害が起こったか。
  • キャスはどうやって家族と和解したのか。あるいは和解していないのか……。

例外的に重要なシーンとしてはっきり示されていたのは、クライマックスのマークが抽象世界でピアノを弾くところだ。

『Until Then』エンディング考察|02

時が止まった、氷の世界。空にはキャスを象徴するカラフルな蝶のサインが浮かんでいる。

音楽が完成した後、マークとニコール、それぞれが心の中にあった執着を手放し、大切な人との別れを受け入れた。マークの母とジェイクが、それぞれ黒い蝶の姿でやってきて、二人の手に止まる(黒い蝶は死者を象徴している)。

ループを止めるのに必要だったもの

2回目のループで、ルイーズはある装置を作る。

『Until Then』エンディング考察|03

この装置により「次元の歪み」が発生した場所は特定できたが、それだけで世界が修復できるわけではない。最終的にはマーク、ニコール、ふたりの共同作業が必要だった。

このとき、ルイーズが作った装置は「デウスエクス・マキナ」の寓意だと思う。つまり、古代ギリシャ演劇でストーリーがもつれ、解決不可能になったときに、天井から機械仕掛けの《神》が下りてきて物語を強制終了させるお決まりの方法だ。

そんなご都合主義の手法に対抗して、二人は、「人間の意思の力」によって事態を解決に導く。物語のなかで、このシーンは決定的に重要だから、ビジュアルとして明確に示されている。

なぜルイーズの装置が「デウスエクス・マキナ」だと思ったのかというと、ゲーム上、最初のループの終盤に「プロム」のイベントがあって、そこではみんなが仮装している。その仮装のテーマが「オリュンポスの夜」なのだ。

『Until Then』エンディング考察|04

卒業式の前にドレスアップしてパーティを開くのは英語圏の文化だと思うが、プロムで仮装するのが、フィリピンでは一般的なのかどうか知らない。だけれども「オリンポス」をテーマにしたのはプレイヤーに対するメッセージだろう。

オリンポス十二神の頂点にいるのがゼウス(デウス)で、時を司るのはさらにその枠外にいるデウスの父・クロノスだ。登場人物らは古代ギリシャの神々に扮するが、十二神の枠外にいる「大いなる存在」によって時間のループを繰り返しており、ループを解消するためには「デウスエクス・マキナ」ではなく人間の力を使った。

そもそも、次元のひずみを作り出していたのは、マークとニコールの悲しみのエネルギーの衝突だ。だからこそ、ループを何度繰り返しても、マークの母が事故に遭うのも、ジェイクが行方不明になる過去も変えられない。ループを繰り返すほど、世界は大きく壊れ、行方不明になる人も増える。

『Until Then』エンディング考察|05

このように読み解くと、マークとニコールが出会う場面を結末において、はっきり描かなかったことも、一応納得できた。

タイトルの意味

ゲームのタイトル『Until Then(そのときまで)』の意味は作中で示されている。1回目のループの終わりに、キャスがカセットテープに吹き込んでいた。

Until Then(そのときまで)=「キャスが自分らしく生きられるようになった未来」

だから、これはマークがキャスを救うための物語だ。

『Until Then』エンディング考察|06

そして、もう一つの意味は「マークとニコールが喪失を受け入れ、再びめぐり会う、そのときまでの物語」

「そのとき」をあえて描かないことによって想像の余地を残し、かえって強い印象を与える作品になった。そう思う。

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