『Shady Part of Me (シャディー パート オブ ミー)』は幻想的なパズルアドベンチャーゲームだ。
プレイヤーは少女とその影を別々に操作し、パズルを解く。そして彼女たちの声から物語の真相を読み解いていく。
パズルゲーが得意でないプレイヤーには少し難しいステージもあるが、平面と立体を組み合わせたパズル、美しいグラフィックや音楽、心をつかまれるような演出が素晴らしい雰囲気を作り出している。
この記事では、6つのポイントを上げながら、Nintendo Switch版『Shady Part of Me』をレビューしていく。
ジャンル | パズルアドベンチャー |
発売元 | Focus Home Interactive |
開発元 | Douze Dixièmes |
プラットフォーム | Nintendo Switch PlayStation 4 Xbox One PC(Steam) |
発売日 | Switch:2021年2月25日 PS4:2020年12月11日 Xbox:2020年12月10日 Steam:2020年12月11日 |
プレイ時間 | 6時間 |
- 幻想的で不気味な世界観が好きな人
- ストーリーの考察が好きな人
少女と影の物語
『Shady Part of Me』では、少女と影の2キャラクターを操作する。
- 光を恐れる孤独な少女
- 少女を導く強気な影
少女と影はケンカをしたり、あやまったり。勇気づけ合い、なぐさめ合い、絆を確かめながらステージを進んでいく。
ストーリーはハッキリと明示されないため、少女と影がしゃべったこと、ステージ上に書かれた言葉、介入する第三者の言葉から読み解くしかない。
不可解な部分が残り、スッキリしないと感じる人もいるだろう。
筆者はリドルストーリーを好むが、いかんせん推論を組み立て、それが確かだと納得するのに十分な情報は明示されなかった。
それでも「終幕」ではジーンときたし、ラストシーン直前では感動した。
80%分かったとは言えないが、50%でもそうかも?と思えるプレイヤーであれば、何かしら心に残るものがあるだろう。
徐々に難解になっていくパズルと快適なリトライ
『Shady Part of Me』ではパズルを解いていくことでストーリーが進んでいく。
パズル要素の難易度
最初は
- スイッチを押す
- 箱を移動させる
など単純なものが多い。
中盤から、光の当たり具合でサイズが変わる箱を移動させるなど複数の条件が絡んだものが増えていく。
終盤には影の向きを上下左右に動かす必要が出てきて、スイッチや箱の操作までやることになり、筆者はかなり悩まされた。
パズルゲームに慣れているプレイヤーにはなんてことのないゲームかもしれないが、筆者に取っては十分な歯ごたえがあった。
どうしても進めない部分が出てきたら、攻略を見るのも一手だろう。
あるシーンでは横スクロールのアクション要素もあるよー
便利な救済要素:巻き戻し
パズルやアクションを失敗すると少女に光が当たってしまったり、影が消されてしまう。
そのときに便利なのが「巻き戻し」機能だ。
Switch版の場合はZRボタンを押せば、現在から過去へ巻き戻しが行われ、ミスしたところだけやり直すことができる。
セーブポイントも細かく設けられているので、ミスしたときのストレスはあまり感じない。
ミスよりパズルを解けないほうがストレスを感じた……
収集要素の鳥を回収するのは難しい
ステージには鳥が飛んでいる。この鳥を集めるとジグソーパズルが完成し、アートワークが見られる仕組みになっている。
鳥を集めるためにはさらに頭を使わねばならず、筆者には難しかった。
鳥を集めずとも無視して進めばよいのだが、見つけたからには取りたい、でも取り方が分からないというジレンマを抱える。
パズル強者は燃える収集要素だろう。
ゾクゾクする演出
『Shady Part of Me』には印象的な仕掛けが複数ある。
スケールの大きな仕掛け
筆者が特に印象的だったのは空中を漂う本の中を進むと少女が歩く道を作るように本が左右の本棚に収納されていくシーンだ。
不思議な力に導かれるようで、鳥肌が立ち、ゾクゾクした。
それ以外にも巨大な胸像の顔が動いたり、少女が走り抜けたあとに崩れた橋が元通りになったりと、スケールが大きく、オオーと声が出てしまうようなびっくりする仕掛けが気に入った。
凝ったタイポグラフィ
本作は「語る」ゲームだ。少女も影もしゃべるし、文字も出る。
文字は映画の字幕のように単調な表示ではなく、アートワークになじんだタイポグラフィになっていて、かっこいい。
演出のために使われることもあり、おもしろい作りだと感じた。
ほんわかしているのに不気味なグラフィック
『Shady Part of Me』の公式コメントではグラフィックは水彩画スタイルと書かれている。
書き込みの多い背景の中にマンガチックなキャラクターが混在し、独特の世界を形作っている。
かわいらしい要素のなかにもどこが不気味なものもあり、筆者はそのインスピレーションの源に興味を持った。
Game*Sparkのインタビュー記事を見つけ、読んでみると本作のリードプロデューサー・Sarahのコメントを見つけた。
マンガ家からの影響もあり、例えばAlberto Varanda、ジャン・ジロー、マルク=アントワーヌ・マチュー、ミロ・マナラ、伊藤潤二ですね。
光と影のパズルADV『Shady Part of Me』ー水彩画のように描かれた不思議な世界を探索【開発者インタビュー】
色使いや塗り方には、バンドデシネっぽさがある。
不条理な世界を顔を隠した少女が旅するという設定は、伊藤潤二の「道のない街」を想起させた。
ファンシーなシーンでもどことなく不気味でゾクゾクする雰囲気作りは伊藤潤二作品やバンドデシネの影響を受けたものだったのだ。
アートワークだけで本を出してほしいぐらい好き
グッと吸い込まれるような音楽
『Shady Part of Me』のファンタジックな雰囲気は音楽によるところも大きい。
テーマ曲である「The Shady Part of Me」はハミングが切なさを感じさせ、少女の孤独や不安を印象付けている。
「Follow my voice (light)」では、曲中盤から入ってくる枯れたドラムとべースのリズムセクションが印象的だ。
少女の精一杯の勇ましさを感じる「A Long dream (light)」もかっこいい。
サントラがあればぜひ買いたいと筆者が探していたら、パブリッシャーのYouTubeチャンネルに本作のBGMがアップされていた。
太っ腹!サービス精神旺盛かよ!
アートワークも眺められて一石二鳥!
本作のBGMはリラックスミュージックであり、幻想的だ。
このサウンドをバックに不安に苛まれた少女を操作する、正反対の作りがおもしろい。
プレイ時間:6時間
『Shady Part of Me』のプレイ時間は6時間。
筆者はかなりパズルに時間を取られてしまったため、かなり長くなってしまった。
パズル慣れしているプレイヤーであれば4~5時間でクリアできるだろう。
ボリュームは価格に見合っていると感じた。
総合評価
総評:良い
3.5/5
『Shady Part of Me (シャディー パート オブ ミー)』はアーティスティックなパズルアドベンチャーゲームだ。
スケールが大きい幻想的な演出や文字の使い方、すべてが語られないストーリーなどプレイ中にワクワクする要素は多かった。
ファンシーながらもどこか不気味なグラフィック、リラクシングな音楽が不穏な雰囲気を完璧に作り出している。
『Shady Part of Me』は不穏な雰囲気のゲームが好きなプレイヤーでパズルに苦手意識がなければプレイしても良いゲームだ。
- ファンシーで不気味なアートワーク
- 作り込まれた音楽
- 快適なリトライ
- 少し難しいパズル
- 解釈が難しいストーリー
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