『秘密のキスは甘くやさしく』は生徒と教育実習生の恋愛模様を描いた百合ビジュアルノベルだ。
キスからはじまる禁断の関係はスリリング……のはずだが!?
恋愛の楽しい部分のみを切り出したことで、最大の問題である「教師と生徒の関係」は触れられず、作品としての深みが足りないまま終わった。
この記事では恋愛の甘い部分だけを描いたストーリーを中心に4つのポイントを上げながら『秘密のキスは甘くやさしく』をレビューしていく。
ジャンル | 百合ビジュアルノベル |
発売元 | iMel |
開発元 | iMel Rosetta (公式サイト) |
プラットフォーム (ストアリンク) | Nintendo Switch PC(Steam) |
発売日 | Switch:2022年2月17日 Steam:未定 |
価格 | Switch:980円(税込) |
プレイ時間 | 2.5時間 |
- 百合の甘い部分だけ味わいたい人
目次
あらすじ(ストーリー)
教育実習が始まる前日。出穂こなみは明日からお世話になる学園へと向かった。

挨拶を終え、自分が受け持つ教室を見に行くと生徒が1人残っていた。彼女は芹沢恵麻だ。
お互いに自己紹介すると、早速恵麻から質問が飛ぶ。
恵麻「好きって、どんな気持ちですか?」

こなみが動揺していると恵麻の顔が近づいて……。
恵麻「……かわいい人」
そう言った直後、こなみはキスされてしまうのだった。
登場人物紹介
出穂 こなみ

星彩女子学園にやってきた教育実習生。
実習中は学園の寮で恵麻と2人暮らし。料理が得意。
SNS上に推しのイラストレーター・エマがいる。
芹沢 恵麻

星彩女子学園の2年生。転入してきたばかりで同級生は距離がある。
こなみが来る前は広い寮に1人で暮らしていた。
エマとしてSNSにイラストを投稿している。
抑揚がなく、甘さだけにフォーカスを当てたシナリオ
『秘密のキスは甘くやさしく』のシナリオには山がない。
エンディング前に2人の関係性を大きく揺るがす出来事が起き、乗り越えて絆を深めたり、隠されていたキャラクターの本心が明かされるといった恋愛イベントがないのだ。
(あるにはあるが、関係性を変化させるには微細すぎる)
その結果、ストーリーが単調に感じられた。

2人の間には障害や試練になり得るファクターがあるのだから、恋愛イベントを作ることは容易にできたはずだ。
まず第一に教育者と生徒の間の禁断の関係。
こなみは教育実習生で、厳密に言えば教師ではないが、生徒から見れば「先生」である。
他の生徒や教員にバレたら、処罰される可能性もある。
それなのにこなみが危険を意識しているような描写はわずかで、学校近くで手をつないだりと、実に不用心だ。
第二に絵師とファンの関係性。
こなみはイラストレーター・エマのファンであり、その正体は恵麻だ。
恵麻の求めに応じて関係を持つとエマのイラストが捗る。こなみはイラストを見たいがために恵麻に流されているのか?と考えるシーンはあれど、早々にエマよりも恵麻のことが好きなのだと納得してしまい、ほとんど悩まない。

どちらの問題も2人の今後を大きく左右しうる問題であるのに、こなみは深く考えずに行動している。
生徒を関係を持つことに全く悩みはないのか?教育実習を終えたら教師になりたいと思っている者がバレたら資格を取り上げられてしまうかもしれない危険な橋を平気で渡るだろうか?
細かいことを気にしない人には向いている。
しかし、筆者は恋愛のおいしい部分だけを切り取り、イチャイチャするだけの単調な作品と受け取った。

こなみはちょっと抜けているけれど、明るく何事にも一生懸命で好感が持てる。恵麻も学生のわりには落ち着いておりミステリアスなキャラクターだ。
どちらも魅力的で、シナリオ次第ではもっとおもしろくなる可能性もあったはずだ。
恵麻が動揺から子どもっぽい一面を見せたり、そんな恵麻をこなみが受け止めるシーンもあり、キャラクターに奥行きが出そうなところもあった。
短編としての制約があったのかもしれないが、展開の少なさは満足とは言えず、エンディングも急ぎすぎている。
ただイチャイチャさせておけば、百合好きは満足するだろうという考えによって制作されたのではないかと疑ってしまうストーリー構成だった。

えむ
qureateのようにSwitch版の後にSteam版をリリースし、例の無償パッチを配布する予定だったんじゃ?
キャラクターのコロコロ変わる表情がかわいい!
『秘密のキスは甘くやさしく』はE-mote(キャラクターアニメーションツール)によってキャラクターの立ち絵がよく動く。
感情の表現が豊かなこなみはいろいろな顔芸で楽しませてくれる。

らんぐ氏の描くキャラクターはかわいらしく、こなみのまだ幼さが残っている様子(リクルートスーツをきた大学生の借り物感)や恵麻の学生でありながらも少し大人びている姿がキャラクターデザインに反映されている。

えむ
表情だけ見ると恵麻のほうがお姉さんっぽい
こなみの元気いっぱいのボイスと表情の変化は、そのキャラクターを印象付けている。
どこかおぼろげで憂いのある恵麻がやっと満面の笑みを見せるシーンには、内面にあった年相応の姿を引き出している。
ここにシナリオで人物に奥行きが出れば優れた作品になっていたはず……。


えむ
こなみのボイスだけが大きすぎて、音量を下げた

黒いジョヴァンナ
大人っぽい少女と年上カップルのわりには衣装が幼い!
もうちょっと洗練された衣装でお願いしたいわね。
快適なシステム・オプション設定
『秘密のキスは甘くやさしく』は数々のギャルゲーを制作してきたiMelから発売されただけあって、快適にプレイできる。システムに不足はなく、オプション設定も豊富だ。

セーブ・ロード | あり スロット数:120 |
クイック セーブ・ロード | あり |
オートモード | あり |
スキップ | あり |
BGM・音声 ボリューム | あり |
バックログ | あり |

えむ
お気に入りのボイス登録もできるよー
クリアまでのプレイ時間は2.5時間
筆者のプレイ時間は2.5時間。
時折ボイスを飛ばしたため、全ボイスを聞いてプレイする場合はもう少し長いプレイ時間になるだろう。
作中に選択肢はなく、シナリオは一本道だ。CGは10枚収録されている。
総合評価
- 表情豊かなキャラクター
- 抑揚のないストーリー
Nintendo Switch

えむ
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このページで使用している『秘密のキスは甘くやさしく』のゲームキャプチャ画像はRosetta / iMelの著作物です。転載、配布等は禁止いたします。
総評:まずまず
『秘密のキスは甘くやさしく』は生徒と教育実習生の恋愛を描いた百合ビジュアルノベルだ。
明るく元気なこなみとミステリアスな恵麻。コロコロ変わる表情の豊かさやビジュアルには充分な魅力があった。
しかし、突然のキスからはじまるシナリオには山がなく、恋愛イベントの作りが弱い上、2人の間に横たわる問題から目を背けていた。
恋愛の甘い部分だけを切り取って描いており、ストーリーに深みは感じられなかった。
全編イチャイチャする百合を好むプレイヤーなら、プレイしてみても良いだろう。