『One Night Stand(ワンナイト スタンド)』は酔いつぶれた翌朝、目を覚ますと隣に知らない女性が寝ていて……というハプニングな状況を体験できるアドベンチャーゲームだ。
謎の女と駆け引きし、会話の中からヒントを集め、どう行動するのが最適なのか探っていくのがおもしろい。
この記事ではゲームシステムを中心に、3つのポイントを上げながら『One Night Stand』をレビューしていく。
ジャンル | アドベンチャー |
発売元 | Kinmoku ラタライカゲームス(CS版) |
開発元 | Kinmoku |
プラットフォーム (ストアリンク) | Nintendo Switch PlayStation 4 Xbox One PC(Steam) |
日本語対応 | ◯ |
発売日 | Switch:2022年2月24日 PS:2022年2月24日 Xbox:2019年10月2日 Steam:2016年11月8日 |
プレイ時間 | 2時間 (全エンディング回収まで) |
- 恋愛のちょっとした修羅場を味わってみたい人
- スリルを好む人
ゲームシステム
『One Night Stand』は見知らぬ女性の部屋で目覚めた男が、女性の素性や昨夜なにがあったのかを探っていくゲームだ。
プレイヤーの選択肢は2つ。女性と会話をするか、家探しして素性がわかるものを探すのかどちらかだ。
好奇心とプライバシー、駆け引きの妙
『One Night Stand』は男女の駆け引きを楽しむゲームだ。
ここはどこ?横で寝ている女性は誰?ゲームは何も分からない状態からスタートする。
生活感がある部屋には彼女の素性を知るためのヒントになりそうなアイテムがゴロゴロ転がっている。
ギターや本など彼女の趣味を知るものから、ノートパソコンや財布などセンシティブなものまでプレイヤーは自由に調べられる。
直に素性を割るなら財布に入っているIDを見たり、ノートパソコンでSNSを開けば良いだろう。しかし、そんな下品なことをする男を彼女は好意的に見るだろうか?
映画や本で彼女の趣味は分かるが、素性は分からない。
主人公がもっとも知りたい情報は手に入らないのだ。ただ、趣味や価値観が同じだったら?彼女には良い印象を与えるかもしれない。
「彼女が誰なのかを知りたい」好奇心と「他人のプライバシーに土足で踏み込んではいけない」という当たり前の誠実さ。この2つが引っ張り合い、あちらを立てればこちらが立たぬ、歯がゆさを感じる。
また、見栄も関係する。見栄を張ろうとして記憶が曖昧な部分を変に言い繕ったりすると、あとでつじつまが合わなくなり、彼女の心象を悪くすることも……。
誠実さが一番大切だぞ
彼女の独特な動き、アニメーションは不思議なリアリティがあった。
ゆらぎのある立ち姿や気まずさを感じさせる伏し目がちな態度。落ち着きのない手の動き、両手の親指をギュッと握りしめる不安な様子。どれも状況と感情にあった動きで、しぐさが自然だ。
ラフなイラストだが、場面に合った所作をさせると途端に人間臭さが生まれる。それがプレイヤーに気まずさや罪悪感を抱かせるファクターとなっている。
【ここからネタバレ】周回プレイは必須だが、1プレイ10分程度でサクサクいける
『One Night Stand』では一度にすべての情報を手に入れることはできない。
部屋のアイテムを調べられる回数や会話の回数は決まっている。
徹底的に部屋を調べて彼女の素性を明らかにする回、円満なコミュニケーションを優先する回など、何度も周回を重ねて情報を集めつつ、グッドエンディングを目指していく。
周回プレイと聞くと面倒なイメージがあるが、本作ではサクサク進む。既読スキップを使えば1周10分もかからずに終わる。選択肢のところでセーブ・ロードを活用するのも一手だ。
エンディングは全部で12つ。グッドやノーマルのような納得できるエンディングからバッドエンドのなかにはしょうもないもの、ゲスなものまでバラエティに富んでいる。
1つクリアするごとに主人公のスマホの『ギャラリー』に画像が追加され、進捗が確認できる演出だ。
マルチエンディング形式によって、プレイヤーは他のエンディングを見たくなり、周回プレイに挑んでいく。その結果として彼女の様々な一面を垣間見ることができる。
ノーヒントですべてのエンディングに到達するのは難しく、筆者は残り3つで行き詰まり、Steamのガイドを見てクリアした。
調べるアイテムと会話がリンクしているため、複雑化しやすく、無意識に同じ選択をしてしまうことがあった。
数回は自力で挑戦してみて、同じエンディングを繰り返してしまうようなら、攻略サイトを見るのも良い。
意固地にならず、さっさと攻略を見よう
残り続ける「大きな謎」
『One Night Stand』は作中で全てが説明されるわけではない。
エンディング後も前夜の詳細や、その後の2人の進展について、具体的な説明はない(バーで出会った事実は、彼女から知らされるが……)
お互いにバーで酔いつぶれて今に至っているのだから、2人の記憶を総合しても分からないのも無理はない。
しかし、どういった流れだったのか簡略化された回想シーンでも良い。プレイヤーに教えてほしかった。
筆者がこんな無粋なこと言い出した原因は、全エンディングをクリアした後に届く1つのメッセージだ。
最後にグッドエンディングを出し、ホッとしたのもつかの間。これまでの流れをひっくり返すような不穏なメッセージが届き、新たな謎が生まれる。
それ以降は描かれず、プレイヤーが謎を解くには与えられたヒントが少なすぎる。結局なんだったのか、心にはモヤモヤが残ったままになってしまう。
筆者は読み手側に解釈を委ねるリドルストーリーを好むが、それにしても放り投げに近いと感じた。
総合評価
総評:良い
3/5
『One Night Stand』はワンナイトラブの翌日をリアルに楽しめるアドベンチャーだ。
主人公の彼女を知りたい欲求と彼女のプライバシーを尊重する気持ちがせめぎあい、あちら立てればこちらが立たぬ絶妙なバランスでプレイヤーを悩ませる。
謎を解明するミステリーの要素と彼女に好印象を与えたい恋愛の要素が混ざりあった恋愛ミステリーだ。
周回プレイで徐々に彼女の素性や人となりが明らかになっていくのはおもしろかったが、最後に放り込まれた大きな謎がそのまま放置されたのにはモヤモヤが残った。
スッキリとした解決を望むプレイヤーにはおすすめできないが、筆者のように駆け引きに面白さを感じ、謎が残るラストも受け入れられるのであれば、プレイしてみてもよいだろう。
- 好奇心とプライバシーの駆け引き
- 周回を重ねて全体像が浮かび上がるシステム
- 残された大きな謎
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