『One Hand Clapping(ワンハンドクラッピング)』はアメリカ・ロサンゼルスのBad Dream Gamesが開発した横スクロールの2Dアドベンチャーゲームだ。
本作最大の特徴は”声”を使った操作。
プレイヤーはマイクに向かって歌い、オブジェクトを動かしてステージを進んでいく。プレイするにはヘッドセットやマイクが必須だ。
この記事では各ステージのギミックを中心として世界観にも触れつつ、『One Hand Clapping』をレビューしていく。
ジャンル | パズルアドベンチャー |
発売元 | HandyGames (公式サイト) |
開発元 | Bad Dream Games |
プラットフォーム (ストアリンク) | Nintendo Switch PlayStation 4 & 5 Xbox Series X|S & One PC(Steam) |
発売日 | Switch:2021年12月14日 PS:2021年12月14日 Xbox:2021年12月14日 Steam:2021年12月14日 |
プレイ時間 | 6時間15分 |
本記事はTHQ Nordic Japanから商品を提供いただき、作成しています。
【各ステージ解説】声を使うギミックの難易度はドンドン上がっていく
『One Hand Clapping』のキャラクターの左右移動やジャンプはボタン操作。ステージ上に現れる多くのギミックが声を使ったものになっているのが本作の特徴だ。
プレイをはじめるとまずは感度の設定が表示される。
筆者は説明に則って設定したが、実際にプレイしてみるとボタンを押した音まで拾ってしまうほど感度が高かった。その都度設定から調整したほうがよい。
まずは声を出すだけ「サイレントシティ」
最初のステージ「サイレントシティ」は“声を出す”だけで簡単に操作できる。
ライトをつけるのも、箱を動かすのも、リストを動かすのも、声を出すだけでできる。チュートリアル的なステージとなっている。
音程を意識しはじめる「デュエット・デザート」
第2のステージ「デュエット・デザート」では音程の概念が加わる。
高い声を出せばリフトが上がり、低い声を出せばリフトは下がる。
ステージ中盤では出した声の音程によって高さが変わる線が出現。低い足場から高い足場へ向かうには、まず低い声を出してから高い声を出して、橋をかけるようにして進んでいく。
ボタン1つですぐやり直しが効くため、ここで苦戦することはなかった。
ステージ後半ではガイド音に合わせて同じ音程の声を出すことになる。ここで活躍するのが「教育モード」だ。
対応するボタン(Steam版でXboxコントローラー使用時:Yボタン)を押すと画面左下に五線譜が表示され、出すべきキーと自分が出しているキーが表示される。
英語表示なので、日本ではどの音に該当するかは以下を参考にしてほしい。
- ド=C
- レ=D
- ミ=E
- ファ=F
- ソ=G
- ラ=A
- シ=B
- ド=C
なんとなくフィーリングでいける!
音程が低すぎたり、高すぎる場合は設定の「レンジ調整」で自分の出しやすい音域に合わせると良い。
ステージ終盤。ここでは、ベルを叩くと音が鳴る。つまり、声で操作するだけではなく楽器を演奏するようなシーンもある。
リズムを極めろ「マエストロの山」
第3のステージ「マエストロの山」からは、打って変わってリズムがメインとなる。
リズムに合わせて移動したり消えたりする足場が多く出現し、”声を出す”プレイからリズムに乗ったプレイが求められる。
途中からは仲間のキャラクターが登場。自分が進みやすいリズムを考えて、リズムよく仲間の腹太鼓を叩くことによって協力を得て前に進むことができる。
さらにはテンポをコントロールする場面もある。
風圧によって高いところに登るギミックではテンポが遅いと風が吹き出る間が長く、キャラクターが落ちてしまう。
しかし、テンポを早めるとポンポンポーンと連続した風になり、登れるようになるといった具合だ。
流れる音楽に合わせて指定されたボタンを押していく場面もあり、筆者はノリノリでプレイした。
歌と言えば、みんな音程の話ばかりするけど、リズムやテンポ感も大切。それにフォーカスしたステージを作ってくれたのが良かった!(元プロドラマー談)
ここからが難しい「フーガの森」
第4のステージ「フーガの森」からはパズル要素が強くなる。指定されたキーの声に反応して動く障害物をコントロールするための難易度はグッと上がる。
- どのキーにどの障害物が反応するのかを確認
- キーを出す順番を判断
- ボタンを押して②の順番で声を出し、記憶させる
- もう一度ボタンを押し、③の音を流している間に障害物をくぐり抜ける
というような流れだ。
ギタリストが使うループステーションっぽいギミックだね
(なに言ってるのか、全然わからん)
声を使ったギミックとパズルが合わさった「フーガの森」はパズルアドベンチャーである本作の真価が発揮されたステージだ。
このステージからが真の『One Hand Clapping』と言えるだろう。
しかし、複雑化した結果としてこのステージで断念したプレイヤーが多いようで、Steamの実績獲得率が大きく下がるのが「フーガの森」からだ。
- サイレントシティ:79.6%
- デュエット・デザート:34.9%
- マエストロの山:18.9%
- フーガの森:8.2%
※2022/7/30時点
ここまでで、すでに脱落者続出ね。
パズルの難易度が上昇・試練の「コーダの洞窟」
第5のステージ「コーダの洞窟」ではパズルの要素がさらに高まり、自分の分身を使ったパズルが登場する。
- ボタンを押す
- 制限時間までに自分の分身を操作して、動きを記録
- もう一度ボタンを押し、②で記録した分身を動かす
- ③と同時に自分を動かして先に進む
といった流れだ。
かんたんに言えば、分身がボタンを押して障害物をどけている間に自分が通過するというようなものだが、そこに制限時間やタイミング、声の使い方が絡んでくる。
何度もプレイして感覚をつかんでいくのがクリアへの道だ。
分身パズルが終わった後は過去の復習とばかり、今までのギミックが順々に登場する。ここまできたプレイヤーならクリアまで到達できるだろう。
ここから先のステージは物語の最終盤となるため割愛する。ちなみに「コーダの洞窟」クリアの実績獲得率は3.9%と狭き門だ(Steam:2022/7/30時点)。筆者も苦戦し、エンディングを見たときには達成感があった。
全編を通じて、声を使ったギミックにはさまざまなバリエーションがある。プレイ時間は約6時間。趣向が凝らされているのは間違いないが、結局は声を出し続けるのみ。少々マンネリ感も感じた。
実際に声を出してプレイするため、肉体的な限界もあり、一気にプレイするのは難しい。
筆者は30分プレイ→休憩を繰り返してクリアまで到達した。日ごとに少しずつプレイするのが本作の快適な遊び方だ。
喉が枯れました……これが連続プレイのダメージ!
【考察あり】意外にダークな世界観を持つストーリー
本作のビジュアルを見たとき、とても明るい、ほんわかとした雰囲気のゲームだと思っていた。
その予想は最初のステージ「サイレントシティ」で早くも覆った。
不穏な気配を感じるアンビエントな音楽、一寸先も見えない闇、監視する目、どう見てもダークな世界観を作り上げる要素しかないではないか!予想とは違ったが、このダークな世界観は好みだ。
「サイレントシティ」を抜けた後は、一変して明るい雰囲気になり、各ステージで出会う仲間たちと先に進んでいく。ところどころでダークな要素はあるが、未来に向かっていくような表現となっている。
ここで抽象的に書いたのは本作のストーリーが作中で明示されているわけではないから。操作説明以外でテキストは表示されず、説明自体も最小限にされている。
筆者のストーリー考察を以下に書いておく。
興味のある方は+ボタンを押すと表示される。ネタバレとなる可能性があるため、注意願いたい。
『One Hand Clapping』のタイトルの意味は「片手拍手」って……どういうこと!?
禅問答に使われる定番の質問らしいわよ。「片手で拍手した音はどんなものですか?(=隻手音声)」
つまりそんなものは存在しない。正解がない質問に対して、自分の頭で考えて前に進みなさいってとこかしらね。
総合評価
『One Hand Clapping』はプレイヤーの声を使ったパズルアドベンチャーだ。
マイクに向かって声を出し、歌うことで仕掛けを動かして進む作りはおもしろい。ただ声を出すだけではなく、音程を合わせる、リズムを変えるといった細かい部分まで活用されているのも良い。
後半になるにつれ、パズルの重要度が高まり、難易度は上がるため、パズルの得手不得手で合う合わないが決まるだろう。
見た目に反してダークな世界観や言葉で説明しない余白のあるストーリーは味わい深い。
“プレイヤーの声で操作する”と聞くとキワモノに思えるが、実際にプレイしてみると音楽への愛情が随所で感じられる優れたゲームだった。
本作は音楽好き、パズルアドベンチャー好きにぜひプレイしてほしいタイトルだ。
- 声を使ったさまざまなギミック
- 思わずノッてしまうリズムパート
- ダークな世界観
- 連続プレイが難しい
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