『非実在都市伝説の作法 Imaginary Fakelore』はPlastic Tekkamaki Manufacturingが制作したフリーのデジタルノベル。
オカルト雑誌の新人記者が怪しげな噂を取材していく過程で社会の暗部を暴いてしまう。
メインの女性キャラクター2人の軽妙なトークと、作中に登場する都市伝説「増殖する路地裏」にぐいぐいと引き込まれる作品だ。
この記事では4つのポイントを上げながら、『非実在都市伝説の作法 Imaginary Fakelore』をレビューする。
ジャンル | デジタルノベル |
制作 | Plastic Tekkamaki Manufacturing |
プラットフォーム (リンク) | PC(Windows) ブラウザ (配布サイト) |
プレイ時間 | 1時間40分 |
- 都市伝説が好きな人
- 社会派ドラマを好む人
- リラクシングな音楽が好きな人
あらすじ
瑛(エイ)は新人ライターとして株式会社ノウティカに入社した。
ノウティカはオカルト雑誌をはじめ、3つの専門誌を発行する出版社だが、瑛にまわされる仕事は雑用ばかり。
うんざりしていたところにマエからオカルト専門誌「ノウティカ」の制作チームに引き込まれる。
瑛は”サイトウ”と偽名を使い、マエと共に「増殖する路地裏」の噂を追うことにした。
“SNS映えする”路地裏が話題となっていた。
野良猫にコーラの空き缶、ポリバケツなど。廃れた雰囲気のある撮影スポットとして人気を集めた。
ある日、話題の路地裏にそっくりな路地裏が各地に現れ、不気味な噂が流れはじめる。
2人が路地裏を取材していたところ、「路地裏デザイナー」を名乗るカカニシから声をかけられる。
彼らはアートと称して路地裏を作り上げ、その裏で”タマテバコ“と呼ぶポリバケツを介して”郵便屋さんに任せられないもの”をやり取りしていた。
路地裏に浮かび上がる社会の闇
ストーリーが終盤に向かうにつれて、タマテバコの真相が明らかになる。
社会の暗部を見てしまったとき、見て見ぬふりをするか……サイトウは判断を迫られる。
マエ「本当に、『何も知らないままでいること』が幸せだったと思う?」
『非実在都市伝説の作法 Imaginary Fakelore』
そして先輩の言葉に背中を押されて、「ある決断」をするのだ。
サイトウの決断が正しいと思うかどうかはプレイヤーによって判断が分かれるだろう。
筆者はサイトウを支持する。
サイトウにとっては苦しい判断であったとしても、現状を黙認して引き伸ばすのではなく、苦しむ女性たちに新しい道を示すことが苦境から立ち直る術でもある。
本作は社会の隅に隠された問題に目を向けて考え、自分なりを答えを見つけ出すきっかけになり得る。
最近の時事問題を一部想起させるところもあって、おもしろかったよ!
サイトウとマエの軽妙な女子トーク
サイトウはノウティカ編集部に来て、持ち前の明るさとノリの良さを発揮し、先輩であるマエを「マエちゃん先輩」と呼んでイジったりしてすぐに打ち解ける。
マエもサイトウに取材方法が野蛮だと指摘されれば「サイトウちゃん後輩に怒られたから4兆年分しょんぼりしてます」と返答したりする。
さらに2人の上司である副編集長のナギもノリがいい。
ナギが率先してボケ、サイトウもボケに乗っかり、マエが呆れる。
3人の軽快なトークが、重くなりそうな物語の雰囲気を明るくしてくれた。
Makitekk氏のシナリオではキャラクターが冗談を言い合いながらも、触れて欲しくないデリケートな部分には踏み込まず、それぞれが節度を持ってじゃれ合っている。
そして、物語の核心部分ではバシッと決める心地よさが味わえた。
日替わりの服装がかわいい
前作『深夜徘徊のための音楽 beats to relax/stray to』と比べてUIはがらりと変わっている。
キャラクターもより今風のデザインになった。
マエちゃん先輩の分厚い前髪がかわいい
筆者が気に入ったのは日々変わっていくサイトウの服装だ。シャツ、パーカー、カーディガンと変わっていく。
なだらかにつながるストーリーのなかで、服装は1日の区切りと意識させる変化だ。
いつも同じアウターのマエちゃん先輩にも変化はあるんだなこれが
クールなLo-Fiサウンドにプラスされた環境音
Makitekk氏の音楽はずば抜けている。
前作と比べ、同じLo-Fiサウンドでもリズムの輪郭がくっきりとした曲が多かった。作品のテーマに合わせた楽曲選択をしたからだろう。曲数も増え、それぞれのシーンに彩りを加えている。
曲中でのスネアの使い方がおもしろく、「C1_Kaedei」ではスネアのクローズドリムショットにかかった深いリバーブ、「C2_Sakurazaka」では浅胴っぽいスネアの乾いた音が印象的だ。
テキストを読む速度と音の余韻がピタリとハマるのが快感。bandcampで無限ループしちゃう。
マエが車内で聞いている、ミックスした環境音も良い。
- 焚き火の音×図書館の勉強室の音
- お経×喫茶店の音
- 中世の城下町をイメージした音×韓国の食堂の音×エンジン音
どんどんディープになっていく音の選択と着想の源が気になる。
総合評価
総評:傑作
5/5
『非実在都市伝説の作法 Imaginary Fakelore』は優れたデジタルノベルだ。
「噂」を入り口にして社会問題へと広がるストーリーは今現在の時事問題を絡め、示唆に富む。
サイトウとマエの軽妙な会話と優れたLo-Fiサウンドで暗くなりそうな世界観のバランスをコントロールしている。
都市伝説が好きな人や、読みごたえのある社会派ドラマを求める人におすすめしたいタイトルだ。
- 引き込まれる社会派ストーリー
- サイトウとマエの絶妙なトーク
- ハマるLo-Fiサウンド
- 特になし
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